中国絵画を楽しむためのポイントとは?

中国絵画入門 (岩波新書)
『中国絵画入門 (岩波新書)』
宇佐美 文理
岩波書店
907円(税込)
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「中国絵画」と言われると、どのような絵画を思い浮かべるでしょうか。あるいは西洋の絵画、日本の絵画とどのように異なるのか、なんとなくイメージできるでしょうか。

 中国哲学・美術学者の宇佐美文理さんは書籍『中国絵画入門』のなかで、中国絵画を読み解くために、絵画のもっとも基本的な要素である「気」と「形」という二大キーワードを掲げています。そして130点もの図版を用いながら、中国絵画の変遷を、時代を追って解説し、どのような視点を持って中国絵画を見れば良いのかを教えてくれます。

 本書の中で挙げられる数々の中国絵画の鑑賞のポイント。例えばそのうちのひとつとして宇佐美さんは、中国絵画における細部の重要性について指摘します。

「日本では、中国の絵画というと、日本の水墨画からの連想で、さらさらっと描かれた印象をもつ絵、という固定観念があるように思われる。もちろんそういう絵も存在するが、基本的に中国の絵画は、細部にわたるまで神経が行き届いているものである」

 さらに、細部を鑑賞することは、中国において「眼福」といった考え方にも繋がるのだと言うのです。

「細部を見て目が喜ぶという感覚は、中国絵画を鑑賞するためには是非とも必要なものである。(中略)中国で書画を楽しむことを『眼福』と呼ぶように、目が喜ぶこと、つまり『見たい』『もっと見ていたい』ということが絵画の価値を決定することはまちがいなく、中国の画家たちが細部にこだわり、またそれを見てきた人たちがそれを楽しんだということは事実なのである」

 絵画の起源から清代の絵画にまで渡る、それぞれの特色や注目すべきポイントを学んでいくことで、本書を読み終えた時には、中国絵画の奥深さを実感できるはずです。そして宇佐美さんの述べていく中国絵画の見方を、これから絵画を見る際に実践すれば、より一層鑑賞の楽しみも増えそうです。

 一晩ごとに秋も深まっていくと、いつもより音楽を聴いてみたり、美術館へ足を運びたくなったりするという方も多いのではないでしょうか。そんな折、本書を読んで、中国絵画について少し学んでから美術館へ向かえば、福を目に授かる経験に出会えるかもしれません。

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