もやもやレビュー

なぜ韓国で1位を記録したのか? 笑いとウルッとくる「違和感」を友達と確かめたくなる『ファーストライド』

『ファーストライド』 9月25日(金)新宿バルト9ほか全国公開

2025年10月の韓国公開時、興行収入ランキング初登場1位を叩き出した話題作『ファーストライド』。豪華キャスト陣の共演で注目を集めた本作だが、ヒットの本質は単なるスター映画の枠にとどまらない。前半の怒涛のコメディで観客を巻き込み、後半では静かに感情の深層を揺さぶるストーリーテリングの妙。この絶妙な構成こそが、口コミによる高い満足度を獲得した最大の理由だ。なぜ本作はこれほどまでに観客の心を掴むのか。ライターの視点からその魅力と構造を読み解いていく。

本作の推進力となっているのは、間違いなくカン・ハヌルやチャウヌをはじめとする豪華キャスト陣の競演だ。6歳からの幼馴染という密な関係性を、実にリアルな空気感で演じ切っている。だが、スクリーンに映し出されるのは、単なる「仲良し4人組の眩しい青春」だけではない。

First-Ride_sub2.jpg

30代になり、置かれた環境も立場も少しずつ変わり始めた男たち。かつてのノリのまま肩を組みながらも、ふとした表情の陰や言葉の端々に、決して埋まらない距離感が漂う。そのリアルな空気感があるからこそ、私たちは彼らのバカ騒ぎをただ笑って観ているだけではいられなくなる。楽しげなハチャメチャ旅行の裏側で、彼らの関係性に一体何が起きているのか。観客は笑いながらも思考を巡らせ、いつの間にかこの作品の虜になっていくのだ。

物語のきっかけは、高校時代に果たせなかった「卒業旅行」を10年越しに実行すること。30歳を迎えた幼馴染4人組は、期待と少しの不満を胸に、人生初の海外旅行へと飛び立つ。しかし、待ち受けていたのは予想外のトラブルの連続だった。パスポートの紛失、予期せぬ事故、そして旅先で浮き彫りになる互いの「隠し事」。テンポよく進むドタバタ劇の影で、長年連れ添ったからこそ言えなかった本音が、少しずつ溢れ出していく----。

First Ride_sub3.jpg

本作に登場する4人組だが、実は「この人が明確な主人公です」という中心人物が用意されていない点に面白さがある。最初に語り手を務めるのはヨンミンだ。高校卒業を控えたある日、ニュージーランドへの移住が決まったはずの彼は、30歳になった旅行時、まさかの"抱き枕"姿で旅に参加する。「彼が主人公かと思いきや、あれ?」と戸惑っていると、今度は秀才のテジョンにスポットが当たり、彼女候補まで現れて主人公風にストーリーが展開していくのだ。

賑やかな旅行の裏で、彼らが抱えるさまざまな感情が少しずつ見え隠れし始める。果たして、この作品に仕掛けられた「違和感」に気づくことはできるだろうか。
私はまんまと騙され、ラストは思わず胸を熱くしながら鑑賞した。

First Ride_sub4.jpg

青春の眩しさと、大人になってからのほろ苦さ。映画『ファーストライド』は、1人で静かに観るのも良いが、ぜひ気置けない友達と一緒に観てほしい作品だ。観終わったあと、「私たちもどこか行こうか」「あの時のアレ、覚えてる?」なんて会話がきっと止まらなくなるはず。笑って、少し泣いて、観た後に誰かと感想を語り合いたくなる魅力に満ちた一作だ。

(文/杉本結)

***
First Ride_sub1.jpg

『ファーストライド』
9月25日(金)新宿バルト9ほか全国公開

監督・脚本:ナム・デジュン
出演:カン・ハヌル、キム・ヨングァン、チャウヌ(ASTRO)、カン・ヨンソク
配給:クロックワークス

2025/韓国/116分
公式サイト:https://klockworx.com/firstride
予告編:https://youtu.be/6LfP4vwalJo?si=uXoxlp8uOvdqSD4Y
© 2025 SHOWBOX, BRAINSHOWER AND TH STORY ALL RIGHTS RESERVED.

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

​