AIに頼った完全犯罪と、予期せぬ罠『5秒で完全犯罪を生成する方法』
『5秒で完全犯罪を生成する方法』 9月11日(金)より全国公開
タイトルを見た瞬間、「これはAIを扱った作品だな」とすぐに推測できた。今や少し困ったことがあれば、まずはAIに尋ねてみるという人も増え、ごく当たり前の行動となりつつある。私たちが手にするスマートフォンやパソコンには当たり前のようにAIが組み込まれ、疑問を抱くことなく使うほど便利なツールとして生活の一部になった。ここ数年の進化と普及のスピードには目を見張るものがある。
しかし、本作の企画が動き出した2023年当時、AIはまだ「少し未来の夢物語」に近い存在だった。ChatGPTが一般公開されたのが2022年11月であることを考えると、これほど早い段階で「事件の隠蔽をAIに相談する」というプロットを着想していた脚本家の感性の鋭さには脱帽する。面白い脚本を生み出すクリエイターのアンテナは、実に遠くまで張り巡らされているのだと痛感させられた。
フリーライターの航(重岡大毅)は、高校教師を誤って殺してしまった妹・幸来(原菜乃華)を守るため、生成AIの指示に従って死体を損壊・工作し、事件の隠蔽を図る。隠蔽は成功したかに思えたが、なんとその手口は世間を騒がせる「連続殺人事件」と全く同じものだった。直後から二人を狙う謎の脅迫や襲撃が始まり、さらに連続殺人を予言する同人小説の存在まで浮上する。事態の真相を追う航がトップ女優・七希(田中みな実)へと辿り着くなか、AIに頼った完全犯罪の行方と、複雑に絡み合う事件の真実が明かされていく――。
本作を鑑賞中、ある実話が脳裏をよぎった。プロ野球の監督を務めていた人物の娘が、親子喧嘩の対処法をAIに相談したところ、アドバイス通りに児童相談所へ通報。結果として警察が出動する騒ぎとなり、父親が逮捕・監督辞任に追い込まれたという事件だ。この事態を受け、著名な映画監督が「人間がAIに操られる未来」への危機感を募らせ、監督復帰を求める署名運動を呼びかけた。結果、12万人分もの署名が集まる事態に発展した。
言うまでもなく、AIが出力する情報がすべて正しいわけではない。私自身、旅行の計画でAIを活用することがあるが、たまに実在しない場所を「おすすめの魅力的な施設や宿」として堂々と提示されることがある。提示された情報が正しいかどうかを人間がファクトチェックする必要性を常々感じている。
我が家の小学生の娘も普段からAIによく話しかけて利用しているが、学校で「AIの情報は必ず正しいか確認するように」と指導を受けており、公式ウェブサイトを参照するなど対策を学んでいるという。どれほど便利で人間より処理が速かろうと、AIが生み出す情報にはどこか人の温もりが欠けており、「AIらしさ」が透けて見える。AIは賢く使いこなすべきものであり、AIに使われてしまっては本末転倒である。
これから先、私たちの生活へさらに深く浸透していくであろうAIとの付き合い方について、改めて深く考えさせられる作品だった。そして何より、企画当時の「少し未来の物語」が、今や圧倒的なリアリティを持って迫ってくる点にゾクりとさせられた。
(文/杉本結)
『5秒で完全犯罪を生成する方法』
9月11日(金)より全国公開
監督:近藤亮太
出演:重岡大毅、原菜乃華、田中みな実
配給:ギャガ
2026/日本映画/107分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/5byodeseisei/
予告編:https://youtu.be/oq9ZRlQRzIQ?si=WfPIHjqEMJ7Wg-Yt
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