行動原理が滅茶苦茶、単なる狂人にしか見えない『MORTAL モータル』

- 『MORTAL モータル(字幕版)』
- アンドレ・ウーヴレダル,アンドレ・ウーヴレダル,ナット・ウルフ,イーベン・オーケルリー,プリヤンカ・ボース

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たまには酷い映画ではなく評価の比較的高くてB級な雰囲気の映画でも見るかと選んだ本作だったが、クソ映画の呪いにでもかかっているのか何とも言えない気分でエンドロールを眺めることに。事前に駄作と覚悟した上で視聴するのとは違い、今回は単純に辛かった。
あらすじは決して悪いものでなかったし、B級映画あるあるの「あらすじと内容がそもそも違う」なんてこともなかったのだが。
Amazonなどに記載されているあらすじでは「ノルウェー西部の荒野で隠れるように野宿をするエリックは、ある日不可解な力で誤って青年を殺害し、逮捕されてしまう。拘留中、エリックは何が起こったかを解明しようとする若き心理学者クリスティーヌと出会う。エリックは親身に話を聞こうとするクリスティーヌに少しずつ心を開き、彼女もまたエリックと話すうちに彼に同情するようになる。やがてアメリカ大使館が現れ、エリックを本国アメリカに移送しようと試みるが、彼は再び不可解な力を使い、クリスティーヌと逃げ出す」とある。嘘ではないのだが物語を転換させるイベントが大体強引で、視聴しながら「そうはならないだろう......」という突っ込みを入れる気力を失わせる塩梅になっている。
自ら鎮静剤を打ち米国行きのヘリに乗ったエリックだったが鎮静剤の効果が切れて目覚めるとなぜか雷撃を放出しヘリが墜落。多重人格の設定でもあるのかと思ったが特段言及されなかった。
その後クリスティーヌのもとを訪ね雷撃の力は巨木が立つ場所の幻覚を見てから得たと告白。そこに追手が迫りクリスティーヌが怪我をすると広範囲に雷撃を放ち気絶した。エリックは病院に運ばれるも先の雷撃のせいで停電し入院中の幼児の生命維持装置が稼働せず心停止に。エリックは幼児を電気ショックで助けようと病室へ向かい、無事解決。そもそも全ての原因はエリックにあるが、彼は英雄と称えられる。
エリックは英雄となったことで警察の協力のもと幻覚で見た場所の調査に。そこには遺跡があり石の宝箱が置かれていた。それを開けるとハンマーが。舞台は北欧で電撃、しかもハンマーということで雷神トールと関連づけているのだと分かるが、出てきたハンマーは金づちサイズ。ショボい。
そこに忘れたころにやってきた追手がクリスティーヌを誤って狙撃し射殺。エリックは怒りのあまり雷撃を放出し辺り一面を焦土にさせエンドロールへ。駆け足にもほどがある。
作中の端々からおそらく制作陣は強大な力を手に入れた主人公の苦悩を描きたかったのだろうと察せられるも、行動原理が全く読めず単なる狂人にしか思えない。制作陣の意図は見事に外れたと言わざるを得ない作品だった。
(文/畑中雄也)

