もやもやレビュー

クズと変態の微妙な戦い『ストーカー 3日目の逆襲』

(字幕版)ストーカー 3日目の逆襲
『(字幕版)ストーカー 3日目の逆襲』
ジョン・ハイアムズ,マルティン・パーション,マティアス・オルソン,ジュールス・ウィルコックス,マーク・メンチャカ,アンソニー・ヒールド
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 煽り運転をした主人公が怒った変態に山小屋へさらわれて3日目に泥仕合を演じて勝利という、ただそれだけの話。そんな話を98分まで薄めるのだから視聴後の感想は虚無しかない。主人公が理不尽にさらされて勝利するならともかく、原因を作ったのが主人公なのだからどんなシーンでも自業自得という単語が頭の中に浮かび何ら共感できるところがない。あと、主人公がさらわれると言っても特に酷い目には遭わないため緊張感もなくひたすら弛緩したシーンが続くのみ。視聴する罰ゲームでしかない。

 しかも、あらすじだけ見るとちゃんとしているのが腹立たしい。Amazonでは「若くして未亡人となったジェシカは都会を離れ、アメリカ北西部の自然あふれる田舎へ車で引っ越すことに。人気のない林道を走行中、ゆっくり走る黒い車を追い抜いたところ、執拗にあおられ、追跡されてしまう。姿の見えない相手に恐怖を感じるが、突如、黒い車はジェシカを追い抜き姿を消してしまった。しかし、悪夢は始まったばかりだった――」と書いてある。

 あらすじからして虚偽というのが呆れるを通り越して感心すらしてしまう。煽ったのは主人公のジェシカで、因果が逆なのだ。もっとも煽ったからさらわれて当然という訳ではないが、主人公に対する同情心は目減りする。

 主人公は山小屋へ監禁されるが、拉致した男はとんでもなくバカなのか扉が無施錠。当然ジェシカはそのまま逃げ出し、偶然出会った猟師の男性と遭遇する。しかしジェシカを探しに来た拉致犯の男によって猟師は撲殺される。希望からの絶望を描きたかったのだろうと思うが、猟師があまりに容易く殺害されてしまうので希望も絶望も特に感じず「何でこの人出てきたのだろう?」くらいしか感想を抱けなかった。

 山小屋へ連れ戻された3日目、男が殺害した猟師の死体を埋めている隙に再び逃げ出そうとする。2日連続で逃げられる時点でこの男には学習という概念がないとしか思えない。
 しかし、実はジェシカは逃げておらず男の車の後部座席で男が乗り込むのを待っていた。

 案の定ジェシカを探すために男が車を発車させたところで主人公は後ろからレンチで首を締めあげた上車内のナイフで男の腕を刺す。
 当然車は事故を起こして横転し、男の携帯電話を奪い外に出たジェシカは男の家に電話。男の妻に笑いながら男の悪行をすべて打ち明けた。
 悪行を暴露された男は怒り狂いジェシカに襲い掛かるも、お互い地面に転がるだけのショボいバトル。男が首を絞めたと思えばジェシカは噛みつき、という塩梅で終盤の見せ場のはずなのに出来の悪い喧嘩が延々と続く。最後はジェシカがナイフで男を刺し、見せ場もなくエンドロールへ。

 拉致した男が3日間のうち2日も連続で逃げられる時点で緊張感はない。おまけに猟師を殴り殺せる力があるはずなのに終盤のバトルは見せ場もなく刺されて死ぬだけ。弛緩した雰囲気だけが気怠く流れ、ヒーリング動画を眺めるよりも眠くなった。

(文/畑中雄也)

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