もやもやレビュー

エクソシスト要素はほぼ皆無『エクソシズム 父と娘、戦慄の戦い』

エクソシズム/父と娘、戦慄の戦い(字幕版)
『エクソシズム/父と娘、戦慄の戦い(字幕版)』
スヴェン・ウンターヴァルト・Jr,スコット・カールソン,マイケル・フィリポウィッチ,ウィリアム・マッキーニー,ケイト・トマノワ,ジャン・ポール・サレス,ジェシカ・モリス
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 この手の作品は元祖『エクソシスト』の影響が強すぎるのか、悪魔に取りつかれた皆さんはとりあえずブリッジをしながら徘徊する節がある。本作もご多分に漏れずブリッジ歩きを堂々披露。「悪魔に取りつかれた人間はブリッジしながら歩く」という言い伝えでもあるのだろうか。視聴者には「この人は悪魔に取りつかれているのだな」と分かりやすい象徴ではあるけども独自性はない。そんな塩梅だから作品としての魅力は薄い。

 自らも悪魔に取りつかれたが意思の力で悪魔を抑え込み友人の神父とエクソシストとして活動していた主人公のデイモンは妻子と3人で穏やかに暮らしていた。ある日、妻のジャネスが悪魔に取りつかれ命を落としてしまう。デイモンは娘のキャロラインを里子に出したが10年後、その娘に悪魔が取りついたと神父から伝えられ会いにいくが――という内容。

 あらすじだけ見ると悪くないし、話もその通りに進んでいくのだがあらゆるシーンの演出が冗長で設定をことごとく無駄にしている。上映時間は92分と決して長い尺ではないのに無駄な場面が多すぎた。

 例えば、娘のキャロラインが18歳の誕生日を迎え友人らとパーティーに興じている状況で主人公のデイモンは何故か森に入り廃屋の壁に描かれた光る五芒星に触れ感電、一方の娘は友人の男を誘惑してから殺害。光る五芒星が何だったのかについて言及はないが、多分悪魔の印なのだろう。そんなものを何ら警戒せず触れる主人公は元エクソシスト。設定がブレブレだ。

 その後、里親の自宅に戻ったキャロラインとデイモンらは対決するのだがデイモンの口から吐き出す光線で鎮圧するという、ホラーとは別の不気味さが。悪魔が存在する世界線なのだからもっと他の演出があっただろうに。

 眠っているキャロラインを脇にデイモンが自分の子ではなく、実は自分の中にいる悪魔と妻の間に生まれた子だと里親へ告白。あまりに唐突な話でもっと前に自然な形で導入できたのではないかという疑問がいっぱい。そのまま台所へ酒を取りに行くデイモン、部屋に戻ると里親は胸に光る五芒星を描かれ死んでいた。その次の瞬間、悪魔に取りつかれた神父がデイモンに襲い掛かる。しかも悪魔同士のバトルなのに拳と鈍器という物理のみ。最終的にデイモンが口から吐き出した光線で神父をKO。終盤でグダグダなバトルで時間が無駄に消費される。

 諸々が終わった後にもう家にいられないと呟くキャロラインに対し、デイモンは自分の家に来ないかと提案するも即座に断られる。キャロラインはデイモンと別れ、1人どこかのトイレで鏡を見ると悪魔が「お前を見てるぞ」と言ってエンドロールへ。里親と神父の死は全くの無駄に。

 CGがチープなのも戦闘シーンが退屈なのもB級映画と思えば気にせず視聴できるがエクソシストを題材にしているにも関わらず、雰囲気さえ演出しないのは非常にどうかと思う。

(文/畑中雄也)

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