もやもやレビュー

あなたは獣人を育てられるか 『LAMB/ラム』

LAMB/ラム(字幕版)
『LAMB/ラム(字幕版)』
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アカデミー賞国際長編部門アイスランド代表作品に選出され、カンヌ国際映画祭でも賞に輝いたスリラー。
羊を抱き抱えた女性という、一見するとほっこりしそうな写真なのに、ただならぬ雰囲気を纏っている様に、この作品を観る事を躊躇した人もいるのではないだろうか。

山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリアのもとへ、明らかに羊ではない「何か」が産まれてくる。
子どものいない2人は、それに「アダ」と名を付け育てることにする。冒頭では隠されているのだが、その姿がわかった瞬間、こちら側はぎょっとする。アダは、顔が羊で身体は幼い人間という奇妙な獣人。かつて子どもを亡くしていた夫婦は、真実に蓋をしアダを溺愛、エゴを爆発させていく。

物語の中で気になるところは多い。半人半獣というと、ギリシャ神話と関係ありそうなところでもあるし、古代エジプトでは羊のツノは男性の生殖力を表す。いや、シンプルにキリスト教での羊を意味するのかもしれない。監督は「好きに解釈を」と言っているので、意図を気にするも気にしないも好き好きだろう。

恐らく本物の羊で撮影していると思うし、アイスランドの絶景も素晴らしい。ちょっとした演出でユーモアも感じ、くすりと笑える部分もある。スリラーが苦手な人は恐々とするかもしれないが、思わぬところで感性をくすぐられる、そんな一本と出会えた。

(文/峰典子)

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