レイプ事件の真実をめぐる法廷劇 『告発の先に』
- 『告発の先に』
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言わずもがなフランスの人気俳優であるシャルロット・ゲンズブールが、パートナーのY・アタルが監督を務めるなか、息子ベン・アタルと共演。といっても心温まる家族物語とは口が裂けても言えない、心中穏やかでいられない内容である。
有名ジャーナリストの父ジャン(ピエール・アルディティ)を訪ねたスタンフォード大学生のアレクサンドル(ベン・アタル)。父は翌日に勲章を授与されることになっており、忙しく電話に出ないため、恋人アダムと暮らす母(シャルロット・ゲンズブール)の元へ。そこで紹介されたアダムの娘ミラ(スザンヌ・ジュアネット)と連れ立ってパーティーに出向くことになるが、その直後、アレクサンドルはミラの告発を受け、性的暴行の容疑で逮捕されることに...。
同意があったと答えるアレクサンドル。突然の出来事にショックを受ける両親。二人の供述は平行線のまま裁判に。誰が正しいのか、何が正しいのか、真実は一つなのだろうか。映画は三つのパートに分かれ、最初はアレクサンドルの視点で、次はミラの視点で描かれるのだが、但し、ここまで見ても、善悪や事の真相はまだわからない。
後半は二年後に開かれる裁判の模様を、一時間もの長尺を割いて見せてくる。「性行為」はあったことが確定しているため、そこに「強制の有無」、そして「女性が拒否出来ない状態だったか」というグレーな部分が法廷内で争われる。リアリティがある分、物語としてメリハリがないと感じるかもしれないが、性問題をしっかりと誠実に描き、私たちの確信を揺るがす法廷劇だと思う。
(文/峰典子)