疑問が全く解消されない100分間『ヘルウィン』
- 『ヘルウィン(字幕版)』
- パトリック・ルシエ,オマー・エップス,エレン・アデア,クリスティーナ・レイエス,ジミー・ケネディ,トム・アトキンス
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B級映画に物語の連続性とか辻褄のあった筋とかを求めるだけ無駄と知りつつも、生身の人間が不死身のような活躍をしたり数年にわたり連続殺人に明け暮れたりする理由くらいは教えてもらわないと登場人物の行動にいちいち「何で?」という疑問を抱き全く解消されない100分を過ごすことになる。結構な尺があるのだからこじつけでもいいので理由や動機を加えて欲しかった。
上記の通り途中から物語が破綻するなんて甘いものではなく終始破綻しているため実際の内容に従ってあらすじを記すことはほぼ不可能だが、配信サイト等の解説には以下のように描かれている。
「2015年、ハロウィンの夜。不気味な仮面をつけた男が、人々をナイフで殺害。犯人は銃に撃たれ死んだと思われたが、毎年ハロウィンの夜に現れ、無差別殺人を繰り返していた。
そして2019年のハロウィンの夜、捜査陣が警戒態勢を取るなか、殺人鬼が現れ...」(アマゾンプライムビデオより引用)
確かに犯人は不気味な仮面をつけた男なのだが、突然現れたのではなく同じ高校の友人らとハロウィンパーティーをしているシーンから始まっている。名前はパトリック。
ナイフを回転させ刃先の指した方向の人間とキスをするという、物騒な王様ゲームのようなことをしていたらマスクを被ったパトリックがキスの代わりにいきなり参加者の男を刺殺。ついでとばかりに周囲の人間も刺し始めたが誰かから刺されてパトリックは病院に搬送。
当然パトリックは警察からの事情聴取を受けるも隙を見て逃走する。逃げる途中でも何人か殺害するも刑事らから銃撃され、そのまま病院の高層から落下。しかし致命傷を負ったはずなのに死体は見つからなかった。犯人のパトリックはサクッと10人くらい殺害しているがこの時点で動機は全くの謎。
不審に思った主人公のデンバー刑事はひとりで捜査をするもパトリックに関する記録がないことに気づく。その後毎年周辺の町でハロウィンの時期に人が殺され、果てはFBIの捜査官まで殺害される。
事件から4年後の2019年、ハロウィン前日にパトリックが大量殺人を犯した町で殺害された犠牲者が多発。当日も1人では不可能な人数が殺害されデンバーは「闇の力を感じる」とか言い出す。
この時点で「ああ、これはそういう感じのホラーなのか」と思って視聴を続けていたら協会主催のお化け屋敷イベントで無差別殺人が起きる。その中でパトリックのかつての同級生だったシェリルが怪我を負い、病院に向かう。ここで4年前のパーティーで暴れるパトリックを刺したのシェリルと判明。それで彼女を執拗に狙ったという話になるのだが、上記の通りパトリックが地元に戻ってきたのは4年ぶり。意味が分からない。
その後、パトリックと同じ格好をした人間が何人か出てきたり瀕死の主人公に対し動機について「憎むべき存在の怪物が必要」とか言い出したり、いよいよ意味が分からない。
茫然としていたら駆け足で話が進みパトリックはシェリルに刺されて死亡するし、彼の仲間も刺されて死亡。主人公たちはまだ存在するはずの"パトリック"たちを倒す決意をしてエンドロールへ。
大量殺人の動機が謎なら撃たれたり高いところから落ちたりしても死なない不死身ぶりも謎。特殊な訓練や改造されたという描写は皆無だし、マスクが意味ありげに色々変わるが特に言及もない。「人がサクサク死ぬなぁ」という以上の感想が出てこない。あまりにあっけなく皆さんお亡くなりになるのでグロさも何もなく、100分という結構な時間を虚無に過ごすことになった。
(文/畑中雄也)