ソダーバーグ監督の出世作!『セックスと嘘とビデオテープ』が描く複雑な愛の形
- 『セックスと嘘とビデオテープ (字幕版)』
- Steven Soderbergh,John Hardy,Robert F. Newmyer,ジェームズ・スペイダー,アンディ・マクダウェル,ピーター・ギャラガー,ローラ・サン・ジャコモ
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『エリン・ブロコビッチ』や『オーシャンズ』シリーズなど、多くの名作を世に送り出してきたスティーブン・ソダーバーグ監督。そんな彼が26歳の若さで手がけた初長編映画『セックスと嘘とビデオテープ』は、1989年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを獲得し、一躍注目を浴びました。今回は、ソダーバーグのキャリアを築いた出世作とも言えるこの作品をご紹介。
郊外に住む主婦のアン(アンディ・マクダウェル)。彼女は精神科医に通い、「世界がゴミで溢れかえるのではないか」など、自分ではどうすることもできないことに悩み、さらには夫ジョン(ピーター・ギャラガー)ともセックスレスの日々を送っていました。一方ジョンは、アンの妹シンシア(ローラ・サン・ジャコモ)と不倫関係にあり、アンに嘘をついては、シンシアと密会していました。そんな中、ジョンの大学時代の友人であるグレアム(ジェームズ・スペイダー)がアンとジョンの家を訪れます。ジョンはシンシアとの時間を作りたいがために、アンにグレアムの家探しを手伝うよう提案。そこからアンとジョンは2人で過ごしますが、数日後、グレアムの引っ越し先を訪れると、そこには大量のビデオテープがあり......。
タイトルから連想される内容とは裏腹に、この作品は多くのベッドシーンを含んでいるわけではなく、性的描写や裸のシーンも控えめ。本作は、性的問題を抱えた人間関係の複雑さに焦点があたっています。また姉妹であるアンとシンシアの対照的なキャラクターも物語に深みを与えているのが面白いポイント。上品で保守的なアンと、自らの表現や性にオープンなシンシアという対照的な姉妹が、物語にさらなる深みを与えているのも見どころ。ジョンは仕事を最優先する野心家で、妹と関係を持ちながら妻にも嘘をつくという自己中心的な人物。そして、ミステリアスで何を考えているか分からないグレアムがその複雑な関係に加わり、誰もが隠し持つ「嘘」と「秘密」が徐々に明らかになっていく様子は、観る者の心を掴みます。本作は、「ソダーバーグが8日で脚本を書き上げた」という逸話が存在しますが、実際には、1年ほど映画のアイディアをノートにまとめていたそう。現在世界的に活躍するソダーバーグ監督の出世作、ぜひチェックしてみてください。
(文/トキエス)