逆境に打ち勝つ力、そして再生の物語『ボストン ストロング 〜ダメな僕だから英雄になれた〜』
- 『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~(字幕版)』
- デヴィッド・ゴードン・グリーン,ジョン・ボローノ,ジェイク・ギレンホール,タチアナ・マスラニー,ミランダ・リチャードソン,クランシー・ブラウン
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2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件。3人が命を落とし、282人が負傷したこの悲劇は、マーク・ウォールバーグ主演の映画『パトリオット・デイ』で事件の経緯が詳しく描かれました。今回ご紹介する『ボストン ストロング 〜ダメな僕だから英雄になれた〜』は、事件そのものではなく、その後の生存者の歩みを描いた作品です。両足を失いながらも生き抜くことを選んだジェフ・ボーマンの回顧録『Stronger』を基に、名優ジェイク・ギレンホールを主演に迎え、監督には『ハロウィン』シリーズで知られるデヴィッド・ゴードン・グリーンが挑みました。
2013年4月。コストコで働くジェフは、別れたり復縁したりを繰り返していた恋人エリンと再会。彼女のボストンマラソン参加を知ったジェフは、彼女への気持ちを取り戻すため、大きなポスターを作ってゴール地点で待ち構えます。しかし、その直後に2度の爆発が発生し、ジェフは重傷を負い、両足を失うことに。目を覚ました病院で、ジェフは犯人を目撃したことを証言し、FBIに協力します。その勇気が全米に伝わり、彼は「ヒーロー」として称賛される存在に。しかし、日々の生活は決して楽ではなく、リハビリに挑む中で、自分自身の現実と向き合わざるを得なくなります。
自分ではなく他人を優先する性格のエリン。突然息子がヒーロー扱いされ、それが誇らしくてたまらない母親。口の悪い仲間たち。こうした人々に囲まれ支えられるものの、ジェフの心には徐々に憂鬱と絶望が深まっていきます。病院で目が覚めた時は軽いジョークすら言うことができていたジェフ。しかし、徐々に彼の中で変化が起こり、その繊細な変化をジェイク・ギレンホールが持ち前の演技力で表現しており、私たちに共感を届けてくれます。IMDbによると、体を引きずりながらガラス戸を叩き、叫び続けるシーンでは、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督が30分間も「カット」をかけず、ジェイクを演技の極限に追い込んだのだとか。彼はこのシーンで、「新たな感情の領域に踏み込み、美しい発見ができた」と語っています。数多くの役を演じてきたジェイクにとっても新たな境地となった、心揺さぶるシーンとなっている。実話ベースの感動物語、ぜひチェックしてみてはいかがでしょう。
(文/トキエス)