【無観客! 誰も観ない映画祭】第28回『キラーコンドーム』
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- ウド・ザメール,ペーター・ローマイヤー,イリス・バーベン,マルク・リヒター,マルティン・ヴァルツ
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『キラーコンドーム』
1996年・ドイツ・107分
監督/マルティン・ヴァルツ
脚本/ラルフ・ケーニッヒ、ティン・ヴァルツ
出演/ウド・ザメール、ペーター・ローマイヤー、マルク・リヒターレオ、ナルド・ランシンク、イリス・バーベンほか
英題『KILLER CONDOM』
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あけましておめでとうございます。新年1発目は、昨年12月に取り上げた余命と戦う叶井俊太郎さんのプロデュース作品『ネクロマンティック』を受けての作品紹介です。まだ前回を読んでいない方は、先に一読してから本コラムに入る事をお勧めします。
『ネクロマンティック』のコラムはこちら↓
/cinema/review/202312/04113816.html
何にでも「キラー」を付ければ、ホラー系バカ映画ができてしまう鉄板コンテンツ。それは『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』(78年)に始まり、ここ数年では『アタック・オブ・ザ・キラー・ドーナツ』(16年)、『キラーソファー』(19年)、『キラー・ジーンズ』(20年)などが製作されています。だが、さすが叶井さんが買い付けてきた『キラーコンドーム』は、それらとは一味も二味も違っていました。
特撮は『ネクロマンティック』の監督ユルグ・ブットゲライトが担当していて、どこかで例のラジコンモスラを登場させます(/cinema/review/202312/04113816.html)。さらにクリーチャー・デザインは『エイリアン』のH・R・ギーガー! そしてストーリーはドイツ版『おっさんずラブ』! これを「ケツ作」と言わずして何と呼びましょうか。
ニューヨーク市警のルイージは、シチリア出身ゆえニックネームはマカロニ刑事! 昭和の大人気刑事ドラマ『太陽にほえろ!』で、萩原健一(ショーケン)が扮したマカロニ刑事は型破り刑事の元祖であり、後任のジーパン刑事(松田優作)に繋がるヒーロー刑事の元祖でもありました。おそらくドイツの脚本家は『太陽にほえろ!』を観ていないでしょうから、ここは偶然の一致。だがルイージはショーケンとは似ても似つかぬ薄い頭髪の小太り短足中年。くわえ煙草にトレンチコート姿で眉間にシワを寄せ、常にハードボイルドを気取っています。
ある日、場末のラブホでペニスが噛みちぎられる事件が一晩に4件発生します。相手をしていた3人の娼婦、1人の女子大生が事情聴取されますが全員否認します。マカロニ刑事はラブホで現地調査を始めますが、案内する若いボーイのビリーを一目で気に入ってしまいます。実はマカロニ刑事は同性愛者だったのです。2人が事件現場の室内で服を脱ぎ始めると、ベット脇の備品コンドームの箱からムキ出し状態のコンドームが「キュッキュ」と鳴きながら這い出てきてマカロニ刑事の股間に飛びつきます。マカロニ刑事はとっさにペニスを守りますが、睾丸1つを食いちぎられてしまいます。入院したマカロニ刑事は、見舞いに来た同僚のサムに「犯人はコンドームだ」と言っても信じてくれません。
片玉になったマカロニ刑事はサムと共に事件現場の客室に監視カメラを設置し、別室でモニターします。すると入ってきたのは刑事を辞めて女装の男娼になっていた元同僚のボブ(マカロニ刑事に片想い中)で、客とSMを始めるのでモニターを見ていた2人は頭を抱えてゲンナリしてしまいます。やがて別室から女の悲鳴が響きます。慌てて急行したマカロニは、食いちぎったペニスを包んだまま廊下を高速で這うコンドームを発見、見事に銃殺します。
コンドームを鑑識に回したマカロニ刑事が家に帰ると、留守電には大量の「おっさんずラブメッセージ」。冴えないルックスの彼ですが、そのシブさと32センチの巨根でモテモテなのです。マカロニ刑事がシャワーを浴びていると(観客サービス)、「今すぐ私と寝て!」とボブが現れます。すると、ボブのハンドバックに潜んでいたコンドームが飛び出してきます。マカロニ刑事はガスコンロのガス管を股に挟み「ほうら、チンチンだよ」と誘います。舌舐めずりするコンドームがカプッとガス管の先に食いつくと、マカロニ刑事はボブに元栓を開けさせます。みるみる膨らんでいくコンドームは「パーン!」と破裂してしまいます。やがて2体の死骸から鑑識結果が出て、ゴムに見えるが人間の皮と同じ細胞でできている人工生物、名付けてキラーコンドームだと解明しました。
被害者は累計で36名に上りました(死者0だけど)が、事件と並行して描かれる複雑な人間模様。「女とつき合え! 何で男を!」。「男の硬いケツがいいんだ!」と警察署の前で怒鳴り合うサムとマカロニ刑事のバディー捜査官。そして2人のかつての同僚ボブは、マカロニ刑事とイケメン・ビリーの間に入っていけない切なさを分厚い化粧とマッチョな体で哀愁たっぷりに表現します。
そうこうしているうちに、行方不明となっているアカデミー賞を受賞したロシアのスミルノフ博士が捜査線上に浮上します。博士はアメリカに移住してゴム研究所の所長に就任、特殊ゴムを開発していました。被害者らが入院している病院の礼拝堂地下にある秘密研究所で、スミルノフ博士はキラーコンドームを製造していたのです。そして主犯は何と、その病院の女医でした。アジトを突き止めたマカロニ刑事に女医は「1999年12月31日、ローマから戻って来るメシアを迎える準備をしているのよ。ソドムとゴモラである世界で一番罪人が多いニューヨーク市民に重い罪を与えるのよ」。女医はキリスト教原理主義に基づく反ジェンダー論者だったのです。そして特別あつらえのケースには、Lサイズどころではない巨根用の特大キラーコンドーム! 全長50センチ、トレマーズの怪物のように牙が口の中に並び、クネクネと幼虫モスラのように動いています(中身はモスラだし)。女医「あんた用よ。その罪深いペニスを出しなさい」。女医はケースを開け、特大キラーコンドームを放ちます。マカロニ刑事はズボンを下ろし、またしても自慢の巨根をオトリに誘います。果たしてマカロニ刑事はニューヨーク市民(のペニス)を救えるのでしょうか......。
2023年8月4日、『キラーコンドーム』が25年ぶりにディレクターズカット完全版として日本で公開されました。その完全版ブルーレイ・ディスクの特典映像には、病を押してステージに上がる叶井さんと、VHS当時のビデオジャケット以来、ブルーレイ・ディスクでもジャケットイラストを描いたジェリー・ビーンによるトークショーが収録されています。『/cinema/review/202312/04113816.html』で紹介したダクタリ・ロレンツのエピソード詳細、ギーガー取材の顛末などが語られ、これが抱腹絶倒の大傑作なので必見です!
【著者紹介】
シーサーペン太(しーさー・ぺんた)
酒の席で話題に上げても、誰も観ていないので全く盛り上がらないSF&ホラー映画ばかりを死ぬまで見続ける、廃版VHSビデオ・DVDコレクター。「一寸の駄作にも五分の魂」が口癖。