もやもやレビュー

名優アンソニー・ホプキンスが演じるサスペンスの巨匠『ヒッチコック』

ヒッチコック (吹替版)
『ヒッチコック (吹替版)』
アンソニー・ホプキンス,ヘレン・ミレン,スカーレット・ヨハンソン,サーシャ・ガヴァシ,Alan Barnette,Ali Bell,Jeffrey Harlacker,Peter Kohn,Joe Medjuck,Richard Middleton,Tom Pollock,Ivan Reitman,John Schneider
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

 名優のアンソニー・ホプキンスが、太ったボディスーツと特殊メイクで、超有名監督のアルフレッド・ヒッチコックを演じた作品『ヒッチコック』。『鳥』『裏窓』『めまい』など数々のヒット作を生み出したヒッチコックの代表作といえば『サイコ』ですよね。彼の『サイコ』にかける思いや彼の私生活を描いており、とても興味深い作品でした。

 主人公は、すでに有名監督となっているヒッチコック。彼は、映画制作の初期の頃に感じていた「楽しさ」を取り戻すことを切望し、ロバート・ブロッホの小説『サイコ』を次のプロジェクトに選びます。この小説は実際の連続殺人鬼エド・ゲインの犯罪に着想を得ており、この物語にヒッチコックは夢中になるのです。アシスタントに、すべての『サイコ』を本屋からなくすように指示し、誰にも結末がバレないように手配するなど、意気込むヒッチコックでしたが、これまで一緒に仕事をしてきたパラマウントからは猛反対されてしまいます。資金繰りが難しくなったヒッチコックは、家を売り、全財産を賭けてこの映画に取り掛かることに。しかし、映画制作が進むにつれ、妻アルマとの関係にヒビが入り......。

 名作『サイコ』の(知る人ぞ知る)トリビアの一つにトイレのシーンがあります。『サイコ』には、トイレの水を流すシーンがあるのですが、それまで映画ではトイレを流すシーンが映されたことは一度もなかったのです。タブーをどのように説得したのか、そんな細かいところまでが描かれている本作。そしてなんといってもアンソニーの演技力に圧倒されました。ヒッチコックの立ち姿や、癖なども徹底的にマスターし、時折見せる「傷つきやすさ」みたいなものが、好感をもてるキャラクターにしてくれています。

名作を生み出すまでの葛藤や妻とのラブストーリーなど、短めの映画にも関わらず、楽しさが溢れる作品に仕上がっています。

(文/トキエス)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム