もやもやレビュー

忍び寄るジメジメとした恐怖『レリック ―遺物―』

レリック 遺物(字幕版)
『レリック 遺物(字幕版)』
エミリー・モーティマー,ロビン・ネヴィン,ベラ・ヒースコート,ナタリー・エリカ・ジェームズ,クリスチャン・ホワイト,ナタリー・エリカ・ジェームズ
商品を購入する
>> Amazon.co.jp

 オーストラリアの日系女性監督ナタリー・エリカ・ジェームズの長編デビュー作となった『レリック ―遺物―』。2021年に日本で公開された本作は、どこかアリ・アスター監督の『へレディタリー/継承』を彷彿とさせるような、ジメジメとした暗い恐怖感を持っています。

 本作は、仕事で多忙なケイが、年配の母親エドナが失踪したという電話を警察から受け、娘サムと一緒に母が住む家へと向かうところからスタート。緑豊かな田園地帯の家に1人で住んでいたエドナが行方不明とあって、森の中を探すケイとサム。数日後、無事にエドナが見つかるのですが、彼女はどこにいたのか説明しようとしないのです。おそらく認知症ではないかと心配するケイは、メルボルンへと向かいフルタイムのケアができる場所を探します。その一方、サムは面倒を見ようとエドナと2人っきりで過ごすのですが......。

 祖母、母、娘の3世代の女性の視点から描かれているこの物語は、かなりゆっくりと進みます。耐え難いほどの静けさもたまにアリ。しかし、物語の展開がスローだからこそ、映画のディティールに目がいくように。たとえば、正面玄関のステンドグラスの窓や、エドナが作ったキャンドル、壁の黒いカビ、ボウルにある腐った果物など、そういった物語を彩る周りの風景がより恐怖感を煽ってきます。「この家、なんだかおかしい」そういうテーマの映画ってたくさんありますが、ジメジメっとした恐怖を徐々に植え付けてくる本作のような映画も珍しいなと思いました。

(文/トキエス)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム