もやもやレビュー

科学者キアヌが家族のクローン化に孤軍奮闘 『レプリカズ』

レプリカズ Blu-ray & DVD (2枚組)
『レプリカズ Blu-ray & DVD (2枚組)』
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家族全員を不慮の事故で亡くした神経科学者ウィリアム・フォスター(キアヌ・リーヴス)が、暴走列車ごとく勢いと愛とサイエンスの力で、クローンとして甦らせようとするという、過激な展開である。事前情報をいれることなく観たので、これはSF方向にいくのか、それともミステリーに寄っていくのか。そもそもクローン生産がうまくいくのかどうか、ひやひやしながら行く先を見守った。

いささか悪趣味とも言える発想、悩むことなく決断していく様子に「おいおい、さすがにそれはちょっと......」と思ってしまうのだが、物語から目が離せないのは、誰もがウィリアムと同じ立場になれば、家族よりも倫理を選ぶと言い切れないからだろう。劇中で彼が発するセリフ『...君ならどうしていた?』が、こちら側にも決断を問いかけてくる。

クローンというテーマは決してファンタジーではない。まさに今、絶滅危惧種の動物をクローンで再生できないかと研究を進める企業もある。亡くしたペットを甦らせたいと考える人たちもいる。そんな問題提起を感じさせながらも、家族愛を丁寧にすくいとった優しい物語であった。

(文/峰典子)

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