もやもやレビュー

知らぬ間に犯罪に加担していた子どもたち。『罪の声』

罪の声
『罪の声』
小栗旬,星野源,阿部純子,野木亜紀子,土井裕泰,那須田淳,渡辺信也,進藤淳一
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 小栗旬と星野源が初共演を果たした映画『罪の声』。昭和最大の未解決事件と言われるグリコ・森永事件を題材にした本作では、小栗旬が記者を演じ、星野源が子供の頃、事件に自分の声を使われていた男性を演じます。

 京都でテーラーを営んでいる曽根俊也(星野源)。彼は物置で見つけた古びた箱の中から、英語で何かが綴られている手帳と、「1984」というタイトルのカセットテープを見つけます。テープを再生してみると、そこには幼い頃の自分の歌声と亡き父の声が。それを懐かしく思っていると、突如、自分が何かを読んでいる音声に切り替わります。そしてその声は、昭和最大の未解決事件の犯行グループが使用した脅迫のテープと同じものだったのです。知らず知らずに犯罪に加担していたことを知った曽根は、事件の真相を追うことに。一方、記者の阿久津(小栗旬)は、すでに時効となったこの事件について記事を書くこととなり、調査に出たところ曽根の存在を知ります。

 自分の声が犯罪に使われていた。なぜ自分は子供の頃にこのテープを録音したのか? 誰に録音させられたのか? さまざまな疑問を頭に浮かべながら、事件の真相を追うごとに明かされていく、衝撃の真実。さらに、この事件で大きな被害を受けたのは、意外な人物で......。その真実を知った時、胸が締め付けられるような思いにさせられます。すぐにでも切れてしまう細い糸のような繋がりを必死に追っていき、真相にたどりついた頃、この事件が想像していたよりも取り返しのつかないような傷を残していることに気づきます。ちなみに本作は、第44回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。巧妙に練られたそのストーリーに、きっとあなたも惹き込まれていくはず。

(文/トキエス)

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