もやもやレビュー

『月刊予告編妄想かわら版』2023年2月号

毎月下旬頃に、翌月公開の映画を各週一本ずつ選んで、その予告編を見てラストシーンやオチを妄想していく『月刊予告編妄想かわら版』十八回目です。
果たして妄想は当たるのか当たらないのか、それを確かめてもらうのもいいですし、予告編を見て気になったら作品があれば、映画館で観てもらえたらうれしいです。
02月公開の映画からは、この四作品を選びました。

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『すべてうまくいきますように』(02月03日公開)
公式サイト:https://ewf-movie.jp/
予告編:https://youtu.be/onxglXyQkIU

★メイン.jpg 名匠フランソワ・オゾン監督が集大成として作り上げた『すべてうまくいきますように』。高齢の父アンドレが脳卒中で倒れ、目覚めると右半身不随になっていた。もうほとんど体を動かせない父は「終わらせてほしい」と娘のエマニュエルたちに頼む。わがままな父親の最後の望みを叶えるために娘たちは、彼の意志と選択を尊重して安楽死に迷いながらも協力することになる。
 フランスでは安楽死が不可能なため、スイスで行うためにエマニュエルたちは動き始めます。同時に人生を終わらせるためにやりのこしたことを手伝ってもらう父と娘たちの交流も予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編を見ても安楽死を迎えようとするアンドレにはあまり悲壮感はなく、父や娘たちの交流はどこかユーモアに満ちています。アンドレが最後には安楽死をやめて、残りの人生をリハビリをしながらできるだけ生きるという展開も考えられなくもないですが、予告編の中に「生きるのと延命は違う」と話している彼の姿があります。
 とすればやはり最後には父は安楽死を選んで決行するのでしょう。自分の意志で決めることが人生には必要なことだと娘たちに伝えるために。そして、エマニュエルはそんな父のことを小説に書き始める、そんなラストシーンかもしれません。

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『すべてうまくいきますように』
2月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ他にて公開
配給:キノフィルムズ
© 2020 MANDARIN PRODUCTION - FOZ - France 2 CINEMA - PLAYTIME PRODUCTION - SCOPE PICTURES

『Sin Clock』(02月10日公開)
公式サイト:https://sinclock.asmik-ace.co.jp/
予告編:https://youtu.be/P7qnNh-4vzc

★メイン.jpg 窪塚洋介18年振りの邦画長編単独出演×牧賢治監督商業映画デビュー作『Sin Clock』。タクシードライバーの高木(窪塚洋介)は妻子と別れ、どん底な日々を過ごしていた。ある日、最低でも数十億するという「幻の名画」の在処に関する情報を偶然知ることになる。高木は同じようにどん底な日々を過ごしている同僚2人を巻き込んで、人生逆転を賭けた強奪計画を立てる。
 完璧な強奪計画だったが、手に入れたはずの金がなくなったことに戸惑う3人の姿を予告編で見ることができます。また、ピストルから放たれる銃弾、コカインに見える白い粉と金、などノワール的な物語に展開していくようです。
 ここからは妄想です。「3人」「3ヶ月前」「3:30」「ハザード3回」「3月3日」「333便」という「3」にまつわるものが予告編で強調されています。タイトルからもシンクロニシティと時計が物語のキーワードであるのがわかります。
 もしかすると高木にとってこの人生、いやこの強奪計画は「3回目」なのかもしれません。実は高木たちは過去2回強奪に失敗して殺されていたのです。そして、蘇ったこの3回目ではじめて成功するという真実が最後に明かされるのかもしれません。また、血に濡れた時計が高速ででたらめに回転する映像もあり、高木が何度も時間を繰り返していたりする可能性もありそうです。

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『Sin Clock』
2月10日(金)より全国公開
配給:アスミック・エース
©2022映画「Sin Clock」製作委員会

『別れる決心』(02月17日公開)
公式サイト:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/
予告編:https://youtu.be/wdIXPHE3SGA

★メイン.jpg 『オールド・ボーイ』『お嬢さん』を手がけたパク・チャヌク監督作『別れる決心』。ある男が山頂から落下し亡くなってしまう。その転落死を追う生真面目な刑事のへジュン(パク・ヘイル)は被害者の美しい妻のソレ(タン・ウェイ)と捜査中に出会うことになる。
 へジュンがソレを疑えば疑うほどに、彼だけでなく彼女も相手に惹かれていくようです。「"あの刑事さんの<心臓>が欲しい"」というソレの声や彼女を監視している刑事の姿なども予告編で見ることができます。
 ここからは妄想です。予告編には車の後部座席で並んでいる二人が手錠で繋がれているシーンがあります。また、「私たちのこと秘密ですよ」と言うソレのセリフもあり、夫の死以降にもなにか事件が起きそうです。
 「<心臓>が欲しい」というセリフがあるので、夫は妻に殺されたのではなく自殺だったのかもしれません。彼女は愛した男性を死に導いてしまう死神のような存在なのかもしれません。ソレに惹かれたへジュンも亡くなった夫同様に彼女から忘れられない存在になりたいと願い始める。彼は彼女に殺されるように計画を練るが失敗してしまい、二人は一緒に逮捕されてしまうそんなラストはどうでしょうか? でもタイトルからするとソレが逮捕されるか、へジュンが殺される終わりになりそうな気もします。

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『別れる決心』
2月17日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』(02月24日公開)
公式サイト:https://hinomaru-movie.com/
予告編:https://youtu.be/yozKx6mmoy8

メイン.jpg TBSドキュメンタリー史上最大の問題作を現代に甦らせた『日の丸〜寺山修司40周年目の挑発〜』。劇作家の寺山修司が構成を担当し、街ゆく人々に「日の丸の赤は何を意味していると思いますか?」などいくつかの挑発的な質問を投げかけた企画を、現在の日本で行ったらどうなるのかという思いで制作された今作。1967年と2022年を対比させる異色のドキュメンタリーのようです。
 昔も今も質問された一般人の人たちの顔には困惑や怒りや戸惑いが浮かんでいるのが予告編で見ることができます。また、「寺山修司が日の丸に仕掛けた脅威のトリック」という言葉も気になります。
 ここからは妄想ですが、ドキュメンタリーなので妄想も難しいものがあります。インタビューによって普段考えていないようなことを急に問うことで、その人の本質や無意識を露わにしようとしたはずです。その集合的意識こそが国家の今の姿だということを視聴者に見せつけようとしたのかもしれません。これは実際にやられたり、映像を見るとかなりの衝撃になると想像ができます。
 現在の日本は以前よりも断絶と分断が広がっています。寺山の挑発は今の方がより鋭利に突き刺さるはずです。映画を観て、ここで問われる質問に自分も答えようと思います。いや、考えるきっかけを作ってみませんか?

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『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』
2月24日(金)より角川シネマ有楽町、ユーロスペース、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
配給:KADOKAWA
©TBSテレビ


文/碇本学

1982年生まれ。物書き&Webサイト編集スタッフ。

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