謎の青年が医者の人生を崩壊させていく『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』
- 『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(字幕版)』
- コリン・ファレル,ニコール・キッドマン,バリー・コーガン,ラフィー・キャシディ,ヨルゴス・ランティモス,エフティミス・フィリップ,ヨルゴス・ランティモス
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第70回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したサスペンススリラー『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』。最近では『THE BATMAN―ザ・バットマン―』でヴィラン役を演じ肉体改造などで驚くほどの役作りを見せたコリン・ファレルが、本作では外科医を演じています。
コリン演じる心臓外科医のスティーブン。彼は美しい妻(ニコール・キッドマン)と二人の可愛い子どもと幸せに暮らしていました。そんな彼は、謎の青年マーティンとダイナーで食事をしたり、時計をプレゼントしてあげたりとちょっと不思議な交流を持っています。ある日、スティーブンがマーティンを自宅に招き入れ、それをきっかけに子どもたちに不幸が襲いかかります。第一段階として、突然歩くことができなくなり、第二段階では、食事を拒否。そして第三段階では目から流血......と、奇妙な出来事が次々と発生。やがてスティーブンはとんでもない選択を迫られることに。
本作は、「登場人物に感情がないのでは?」というくらい、登場人物が淡々と話すのが不気味で印象的。その不気味さをより掻き立てるのは、音楽とカメラワーク。まるで心理的に操作されているのではないかと思ってしまうほど奇妙なんです。実はこの映画、冒頭シーンには隠されたエピソードが。心臓手術のシーンが生々しく描かれているのですが、これは実はコリン・ファレルが実際に立ち会った本物のバイパス手術を撮影したものだったと言います。「Hot Ones」に出演した際にコリンはこの経験に「動揺した」とコメントし「もう二度と見たくない」とも発言。そんな強烈なシーンがまさかのオープニングって......。強烈な印象を最初に与えられ、その後は心理的に追い詰められていく。これはいい意味でも悪い意味でも「すごい映画体験」で、エンドロール後はショックが後を引きました。
(文/トキエス)