もやもやレビュー

ありそうでなかった作品を作る天才監督の最新作『プアン/友だちとよばせて』

『プアン/友だちとよばせて』 8月5日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の監督ウォン・カーウァイの最新作と聞いただけで映画好きなら興味を持つ人も多いのではないでしょうか?
前作ではテストのカンニングを題材にするというありそうでなかった作品をスリリングな展開で描ききった。そんな監督が今回選んだのは、余命宣告を受けた主人公が友達とたどる元カノツアーのロードムービーかと思いきやそれだけではとどまらないまさかの展開が...。

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オープニングからテンションの上がるバーでカクテルを作るシーン。とてもオシャレでセンスの良いカメラワークに心躍り、この映画イケてる映画になるに違いないと観客の心を鷲掴みにする。

カセットテープのA面とB面で表現される本作の構成が非常に見事。A面は病気の友人ウードとバーテンダーのボスの男2人でウードの元カノへの忘れられない恋への心残りに決着をつけるための旅をするロードムービー。
ここで突っ込みたいのが、何人の元カノに会えば心残りはなくなるの!?っていうところ。笑
何人も会いに行きます!
ラジオDJだったウードの亡き父親が残したBMWに乗り、父親のラジオ番組の録音を聴きながらのドライブシーンはエモさがありとても良かった。

そもそもカセットテープがどんなものなのか知っているのは今の30代くらいまでらしい、と最近テレビで見た。
確かに、自分が幼い頃は(筆者は30代)CDをレンタルしてきてはカセットテープにダビングして車で聴いたり、レコーダーで聴いていた記憶がある。その後MD、そして配信へと姿を変えていく音楽のありかたに思いを馳せたりしながら鑑賞した。

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後半となるB面部分。こちらはもう全てがネタバレ要素があり多くは語れないが、ウードがボスへの秘密を打ち明けるのだが、。それがとんでもない秘密なのだ。この秘密がなんとも重くて、受け入れることが出来るのか出来ないのか賛否両論ありそうで、作品の評価も別れるところになってくるのかなと思う。

私は作品全体として、とても音楽がタイプだった。後半部分の展開については満足度の高い胸キュン出来るラストだったと思う。また、女性目線と男性目線でも作品のとらえかたが全く違うものになりそうなのも面白いところだ。

元カノ目線にたてば元カレが突然訪ねてくることって迷惑でもあると思う。
作品は男性目線で捉えやすい作りになっているが、映画を見終わって現実に帰ってからゆっくり考えると、そんな見方もあるなと思ったりしてあとからじわじわくるタイプの作品でもある。先の読めない展開を期待する人におすすめしたい一本だ。

(文/杉本結)

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『プアン/友だちとよばせて』
8月5日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー

監督:バズ・プーンピリヤ
出演:トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、ヴィオーレット・ウォーティア AND オークベープ・チュティモン
配給:ギャガ

原題:One For The Road
2021年/タイ/129分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/puan/
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