もやもやレビュー

愛って何だ、とふと思ったときに『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』

ジョン・F・ドノヴァンの死と生(字幕版)
『ジョン・F・ドノヴァンの死と生(字幕版)』
キット・ハリントン,ナタリー・ポートマン,スーザン・サランドン,ジェイコブ・トレンブレイ,キャシー・ベイツ,タンディ・ニュートン,ベン・シュネッツァー,マイケル・ガンボン,グザビエ・ドラン,グザビエ・ドラン
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2009年のデビュー作『マイ・マザー』を皮切りに、毎年のように新作を世に出し続けているモントリオール出身の若手監督、グサヴィエ・ドラン。今となっては「僕の映画に出てくれないか」と俳優にメールを送る機会が増えた彼だが、幼いころは愛してやまない俳優たちにファンレターを送りつけていたという。たった7歳のグザヴィエくんがはじめて送ったファンレターは、『タイタニック』時代のレオナルド・ディカプリオ宛。残念なことに返事は来なかった。でも、もし返事が来ていたら......を起点に生まれたのが、『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』(2018年)である。

本作では、少年ルパート(ジェイコブ・トレンブイ)が子供たちから絶大なる支持を集める若手俳優、ジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)にファンレターを出すと、まさかの返事が返ってくる。それも一度ではなく、100回を超えるやりとりが数年におよんで続く。それをぷつりと打ち切るのが、ジョンの突然の死。大人になったルパートの回想を通して当時のジョンの人生、ルパートの人生、二人が心を通わせた理由が少しずつ見えてくる。

愛情は伝えるのも受け取るのも簡単なようでむずかしい。いくら大切な人でも心をうまく通わせられず、溝ができてしまうこともある。でも少し離れては少し歩み寄るを繰り返していくことで、形を変えながらも絆は深まり続けるものなのかもしれない。二人の人生からは、歩み寄ることがいかにむずかしく、いかに大切かを突きつけられる。

(文/鈴木未来)

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