最強のオバちゃん参上!『カンフーハッスル』
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肝の据わったパワフルな女性を見つけると、自然と崇拝の眼差しを送ってしまう癖がある。ビル・マーレイが笑い転げたという香港映画『カンフーハッスル』(2004年)にも、かっこいいの一言では物足りないほど強烈な女性(ユン・チウ)が登場する。
格好は基本寝巻き。ホットカーラーをいくつも髪に巻きつけて、タバコを常に口にくわえている彼女は、少しまるまるとしたオバちゃん。貧しいながらも人々がいたって平和に暮らす集合住宅「豚小屋砦」で、夫(ユン・ワー)と大家をつとめている。仁王立ちをして「早く家賃を払え」と怒鳴り散らす彼女はいかにも強そうだ。ただの口うるさいオバさんかと思いきや、そうではない。なにせ自分を目掛けて飛んでくる斧を片手でキャッチできる身体能力を持ち、武器をあっという間に破壊する叫び声だって出せる。何を隠そう、彼女は武術の達人なのだ。ところが必要に迫られるまでは、武術を誰にも見せずにいた。その理由には彼女の繊細な一面が見え隠れして、余計に惚れ込んでしまうのである。
ここまで書いておいて何だが、映画ポスターからも推測できるように主人公はオバちゃんではなく、チンピラのシン(チャウ・シンチー)だ。恐喝が下手くそで暴力を振るうのも苦手な彼が目指すのは、斧で人を殺す暴力組織「斧頭会(ふとうかい)」に入ること。そんな斧頭会の一員を装って彼が豚小屋砦にやってくると、大袈裟すぎて笑える武術シーンが次々と繰り広げられる。ホットカーラーを外して本気の戦いに挑むオバちゃんの姿はもちろん必見だ!
文/鈴木未来