友を売るか。ハリウッドを去るか。 『真実の瞬間』
- 『真実の瞬間(とき)(字幕版)』
- ロバート・デ・ニーロ,アネット・ベニング,ジョージ・ウェント,パトリシア・ウェティグ,サム・ワナメイカー,アーウィン・ウィンクラー
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第二次世界大戦後のアメリカで、共産党員およびその支持者を追放する動きがあった。通称「赤狩り」と呼ばれ、ハリウッドでもチャーリー・チャップリンが亡命を余儀なくされたり(帰国は叶わずスイスで仕事を続け永眠)、多くの映画関係者が仕事を失う大スキャンダルとなる。現代史の教科書にも登場する内容だが、その断面を知っている日本人は少ないのかもしれない。
『真実の瞬間』は、赤狩りでフランス亡命した実在の映画監督がモデル。ロバート・デ・ニーロが主演を務め、思想の自由が制限され、揺れ動く50年代の映画業界を描く。
非米活動委員会のブラックリストに載ったことに驚きながらも、審問会への出頭を拒んだデヴィット・メリル(R・デ・ニーロ)。たちまち撮影所への出入りを禁止され、友人にも裏切られ路頭に迷う。ついに彼は委員会に召喚され、厳しい追及を受けるはめになるのだが......。
保身のために仲間を売るか、それともポリシーを貫くのか。事前に事の成り行きを調べてしまったせいもあるのだが、流れはやや鈍調。しかし最後の最後でデニーロ節が炸裂。感動的なスピーチを見せてくれる。マーチン・スコセッシも"映画監督"役で出演。役者としてのスコセッシを見れる数少ない映画のひとつだろう。
今もなお、ハリウッドで尾を引いていると言われる赤狩り。さらに掘り下げてみたいという人には、山本おさむ氏による漫画『赤狩り』をおすすめしたい。名作映画の裏側で権力と闘う映画人をダイナミックに描いている。
(文/峰典子)