もやもやレビュー

声だけを頼りに展開する独白型サスペンス 『ギルティ』

THE GUILTY/ギルティ(字幕版)
『THE GUILTY/ギルティ(字幕版)』
ヤコブ・セーダーグレン,イェシカ・ディナウエ,ヨハン・オルセン,オマール・シャガウィー,グスタフ・モーラー,エミール・ニゴー・アルバートセン,グスタフ・モーラー
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聞けばデンマーク映画だという。監督にとって初の長編映画、主演も馴染みのない俳優、限定された一つの空間が舞台で、ほぼ一人芝居。しかも上映時間は88分と短い。これだけ並べると随分とニッチな映画に感じるかもしれないが、米レビューサイト「ロッテントマト」で観客満足度100%を叩き出し『サンダンス国際映画祭』では観客賞を受賞。そしてNetflixでリメイク作もつくられた。どうして『THE GUILTY/ギルティ』に魅了されてしまうのか。

訳あって捜査の第一線から緊急通報指令室のオペレーターに配置転換されたアスガー。再び現場に戻れる日がやってきたため、オペレーター業務最後の日を迎えていた。そんなタイミングで受けた通報は、誘拐され怯えている女性から。現場の状況は一切見せず、ただ電話からの女性声と漏れ聴こえる音だけによって展開していくのである。偶然巻き込まれた主人公が、必死に闘う様子。そして、被害者に迫る危険や事件解決までのタイムリミットの設定により、没入感たっぷり追体験が出来る。最後の最後まで目と耳を離せない。

主演のヤコブ・セーダーグレンが気になって調べてみたが、やはり日本で観られる作品は少ない。アルコール依存症の母親と家族を描いた『光のほうへ』や、戦時下のノルウェーを舞台にした『エスケープ ナチスからの逃亡』など、アカデミックな作品が多い模様。気になる人は是非チェックを。

(文/峰典子)

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