イケないものをゴクリ『Swallow/スワロウ』
- 『SWALLOW/スワロウ (Blu-ray+DVDセット)』
- ヘイリー・ベネット,オースティン・ストウェル,エリザベス・マーヴェル,デヴィッド・ラッシュ,カーロ・ミラベラ=デイヴィス
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できると思いもしなかったことをやり遂げると、誰だって清々しい感覚を覚える。「自分の力でやり遂げたんだ」そう思うと、まるでゲームの中の手強いボスを倒したかのような、ある種のハイに包まれる。
『Swallow/スワロウ』(2019年)の主人公、ハンター(ヘイリー・ベネット)が静かに達成感を感じるのは、異物を飲み込んだとき。ビー玉にはじまり画びょうと続き、飲み込んだ異物コレクションは日に日に増えていく。これもいけるんじゃないか、私。ビー玉と似たサイズのものを見つけては、そう問わずにいられない。ちなみにハンターの儀式は「異物を飲み込む」だけにとどまらず、ゴム手袋をつけた手をトイレに突っ込み、排泄物から異物を取り出してようやく終了する。厳密にいえば、きれいに洗い上げた異物たちを鏡の前に飾って、一旦終了である。
そもそもなぜ異物を飲み込むことにハマってしまったのか。ハンターは一見、何不自由のない生活を送っているようにも見える。何せ住まいは家を一周しただけでちょうどいい散歩になりそうな、大豪邸(もちろんプール付)。家族との食事会で彼女を讃えるような旦那がいるうえに、晴れて、赤ちゃんを授かったばかりだ。でも、不自由じゃない=幸せである、なんて言い切れない。彼女が置かれた状況が少しずつ見えてくると、これくらい飲み込ませてくれ、と彼女を代弁したくもなるかもしれない。
(文/鈴木未来)