もやもやレビュー

個性は全開に出すべし『君とボクの虹色の世界』

君とボクの虹色の世界 [DVD]
『君とボクの虹色の世界 [DVD]』
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実はマシュマロを5個同時に口に入れられるなど、自分のちょっと変わった特徴をすぐに表に出すのは、意外とむずかしいかもしれない。「変な空気になったらどうしよう」そう考えているうちに、いつしか出る幕がなくなっている。ミランダ・ジュライ監督の『君とボクの虹色の世界』(2005年)は、ぎこちなくても自分を貫こうと、こちら側に向かってウィンクをしてくる映画である。

主人公のクリスティーン(ミランダ・ジュライ)は、30歳、女性。自宅で自作自演の動画を作るアーティストでありながら、昼間は高齢者タクシーの運転手をしている。彼女はデパートの靴屋で働く男性店員、リチャード(ジョン・ホークス)に恋に落ちると、自分なりに、全力でぶつかる。彼が働く姿を遠くから見つめる、あとをつけて馴れなれしく彼の車に乗り込む...など、その姿はどこかぎこちなく、ちょっぴりストーカーっぽい。でも彼女は一切ためらいを見せない。

クリスティーンとリチャードの周辺人物も、自分の一風変わった特徴を隠したりはしない。たとえばリチャードの14歳の息子、ピーター(マイルス・トンプソン)が、小学生の女の子、シルヴィー(カーリー・ウェスターマン)の部屋に立ち寄ると、彼女は真っ先に嫁入り道具コレクションを彼の前に並べて見せる。そもそもどの場面においても周りの目を気にする工程が、きれいさっぱり省かれている。ありのままをさらけ出す彼らに、ジワジワと元気がもらえる映画である。

(文/鈴木未来)

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