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STオタクの少女が好き!を叶えるバス旅へ 『500ページの夢の束』

500ページの夢の束 [DVD]
『500ページの夢の束 [DVD]』
ダコタ・ファニング,ベン・リューイン
ポニーキャニオン
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ここ数年、やたら自己肯定力ってフレーズが世に出回っているのを見ると、つまりは自分を否定してしまう人も増えている、ということを実感してしまう。そんな厳しい世の中で、推しのいる人生ってやっぱり鮮やかなのだろうな、って思うのです。なにかを愛することは、自分を肯定することに繋がるし、心身が健やかになれるような気がします。それに仲間にも出会えますよね。『500ページの夢の束』は、好きという感情を表に出すことを学んだ少女の話。自己肯定力ってなんだっけって人はもちろん、子どもにも見てもらいたい一本なんです(文部科学省選定作品!)。

グループホームに暮らす自閉症のウェンディ(ダコタ・ファニング)は、ソーシャルワーカーの協力でアルバイトを始めたばかり。姉とはちょっと疎遠ぎみ。そんな彼女は凄まじい『スタートレック』マニア。いつか自分なりのスタートレックの脚本を書くことが夢だったウェンディは、ある日「スタートレック脚本コンテスト」が開かれることを知り、渾身の一作を書き上げる。しかし、郵送では締め切りに間に合わないことに気付き、意を決しバッグに荷物を詰め、外へ飛び出します。小脇に原稿を抱え、犬をお供に未知の世界へ出発するのです。

行く先々でトラブルが起きては平和に解決する。意外なところで自分と通じ合える仲間にも出会えます。この予定調和な展開がいい。余談ですが、タイトルにある「500ページ」というのは、実はウェンディが盛っていて、実はそんなに書けてことが途中でわかります。その背伸び具合がまたいじらしく、愛おしいのです。

(文/峰典子)

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