もやもやレビュー

J・フェニックスが完全犯罪を企てる 『教授のおかしな妄想殺人』

教授のおかしな妄想殺人 [Blu-ray]
『教授のおかしな妄想殺人 [Blu-ray]』
ホアキン・フェニックス,エマ・ストーン,パーカー・ポージー,ウディ・アレン
KADOKAWA / 角川書店
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冒頭、アメリカ東部の大学に新しい教授が赴任してくる所から始まる。エイブ(ホアキン・フェニックス)は哲学の専門家。若いうちは政治活動や執筆に熱中し、精力的に世界中を飛び回っていたのだが、妻の浮気やジャーナリストの友人の死により、慢性的に孤独な無気力人間になっていた。体重を15キロほど増やして演じるホアキン・フェニックスのベルトに乗った贅肉が、エイブの怠惰な日常をリアルに表してくれる。

そんな心身ともにたるみきった彼を面白がり慕うのが、女学生ジル(エマ・ストーン)。変人で偏屈な年上の教授を映画館や美術館に誘い出し、なんとかしてあげたいと入れあげる。彼氏や家族にまで教授の話を聞かせて止まらない始末で、当然のように校内でも噂が広まる。想像通り、二人が恋仲になるまでにそう長くはかからない。ここまでが前半。

そんなある日、たまたま立ち寄ったダイナーで悪徳判事の噂を耳にする。そこでエイブの脳裏に閃いたのは、突拍子もない考え。自分であれば誰にも疑われることなく、判事を殺害することができるのはないか...。悪人を消すための殺人計画を企てはじめると、まるで水を得た魚のように、生き生きとしだすエイブ。ジルとの駆け引きはシニカルで着地場所不明。ゴロゴロと話が転がっていくものだから、もう目が離せなくなる。

(文/峰典子)

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