もやもやレビュー

実体のないAIとの恋の行方『her/世界でひとつの彼女』

her/世界でひとつの彼女 ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組) [Blu-ray]
『her/世界でひとつの彼女 ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組) [Blu-ray]』
ホアキン・フェニックス,エイミー・アダムス,ルーニー・マーラ,オリヴィア・ワイルド,スカーレット・ヨハンソン,スパイク・ジョーンズ
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出会いも告白もお付き合いもオンライン上で済ます、リモート恋愛なるものがコロナ禍で加速しているという。ネタのようなものだと思っていたが、あながちそうとも言えないらしい。現代はインフラが整い、家事が簡易化されてきている。核家族化も進み、単身世帯も増えてきている。なんでもかんでもアプリ化。そして、リモート恋愛ときた。このままでいくと「愛」もAIで代替出来るようになるだろうか。

主人公のセオドアを演じるはホアキン・フェニックス。手紙の代筆業社に勤める。そこに現れるのは、姿形のない声だけの存在のAIサマンサ(声はスカーレット・ヨハンソン。つい彼女の顔を思い浮かべ、なかなか役に没入できないのは、ちょっと痛いところ) 。彼女は気が効くし、優しく、ユーモアのセンスもある。そりゃ好きになっちゃうよという状態で、順調に関係を深めていくセオドア。愛し合う二人?は、第三者を使った擬似セックスにも挑戦し始める。愛の形を模索する奮闘ぶりは本編でご確認いただきたい。

終わり方がやや抽象的で、解釈の余地がたくさんあると思うが、相手を受け入れられない恋愛をしてきたセオドアが、ようやく愛の形を客観視できた、と私は受け取った。やはり何より大切なのは、相手をハグしたり、寄り添って音楽を聴くことなのだ。しかし一方で、セオドアとサマンサの恋愛を虚偽と言い切れるだろうか。この映画は恋愛コミュニケーションを描くにあたって一石を投じてくれた映画だと思う。真実は一つにあらず。

(文/峰典子)

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