もやもやレビュー

実際に起きた集団自殺事件を基に観客に恐怖を与える『サクラメント 死の楽園』

サクラメント 死の楽園(字幕版)
『サクラメント 死の楽園(字幕版)』
AJ・ボーウェン,ジョー・スワンバーグ,ケンタッカー・オードリー,エイミー・サイメッツ,ジーン・ジョーンズ,タイ・ウェスト,タイ・ウェスト,イーライ・ロス
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 1978年、アメリカのキリスト系のカルト教団「人民寺院」が集団自殺を決行。人里離れたコミューンで918人もの人が命を落としました。そんな残虐で悲惨な事件現場に、もし記者として訪れたら......? 『サクラメント 死の楽園』はまさにそのスリル、そして集団自殺の恐怖を画面を通して体験することができる、人民寺院の集団自殺事件をモチーフにしたモキュメンタリー作品です。

 世界的デジタルメディアの「VICE」の記者であるサムとカメラマンのジェイクは、同じくカメラマンのパトリックから妹のストーリーを聞かされて興味を持ちます。パトリックの妹は、新興宗教の信者たちが暮らす「エデン教区」と呼ばれる理想郷に住んでおり、ドラッグ依存から立ち直ったといいます。その怪しげなカルト的な宗教の真相を突き止めるべく、サムとジェイクとパトリックは、エデン教区への取材に向かいます。そこでは人々が笑顔で暮らし、妹も幸せそう。しかし、一人の少女が彼らに近づき「助けて」と言うメモ書きを渡します。

 「VICE」も実際にある大手メディアで、何だか本当のドキュメンタリーを見ている気分に。みんなが崇めるファーザーと言う存在は、かなり独特な人物ですが、人を熱狂させる何かを持っているのが、スクリーンを通して感じることができます。宗教に洗脳されてしまった人々の不気味な姿にも圧倒されます。ストーリーが進むにつれ、「何だか危険」「何だか怪しい」と言う勘がどんどん当たっていき、その推測と劇中で起こる出来事が一致することで、何もいえない恐怖が私たち観客に襲いかかります。実際にこんなことがあったのかと思うと、悲しくもなる一本。POV方式の映画が好きな人はぜひ。

(文/トキエス)

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