天才アーティストの人生をふわりと辿る『バスキア』
- 『バスキア(字幕版)』
- ジェフリー・ライト,クレア・フォーラニ,ベニチオ・デル・トロ,マイケル・ウィンコット,デヴィッド・ボウイ,デニス・ホッパー,ゲイリー・オールドマン,コートニー・ラブ,Julian Schnabel,Lech Majewski,John Bowe,Michael Holman,ジュリアン・シュナーベル,Joseph Allen,Peter Brant,Jon Kilik,Lech Majewski,Randy Ostrow,Sigurjon Sighvatsson,Michiyo Yoshizaki
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最近ではスマートフォンを開けば、情報がすぐにたくさん手に入る。たとえば気になるアーティストやミュージシャンがいれば、ソーシャルメディアなどを覗くだけで「朝食には決まってスムージーを飲んでいる」など、ときには私生活丸見えの情報まで入手できてしまう。でも、アートや音楽だけがぽんと差し出されて、作り手の正体はサッパリわからないというのもワクワクする。
スマートフォンもなければインターネットも盛んでなかった1970年代後半に、「SAMO©(セイモ)」という文字とペアで残されたグラフィティが、マンハッタンの壁に次々と登場しはじめた。やがて故ジャン=ミシェル・バスキアとアル・ディアズが「俺らがSAMO©だ」と週刊誌「ヴィレッジ・ヴォイス」に暴露するのだけれど、SAMO©(セイモ)の正体は、活動開始から一年ほど誰も知ることがなかった。
SAMO©の片割れとして正体を明かして以降、ものすごい勢いで名声を博したアーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアの人生をゆる〜くたどるのが、映画『バスキア』(1996年)。ルネ・リチャードに発掘されたことやアンディ・ウォーホルとの出会いと友情、そして彼の早すぎる死に至るまでの数年が描かれている。
監督を務めたのはバスキアと同じように、ギャラリストのメアリー・ブーンが注目した画家のジュリアン・シュナーベル。ところがバスキアを演じたジェフリー・ライトは、できあがった作品を観て「本作でバスキアは、ずいぶんとおとなしく描かれてしまった。彼はもっと力強い人物だったのに」とシュナーベル監督が描いたバスキアを残念そうに語っていた。そんなことも踏まえつつ、ちょっと距離を置いて観るのがいいのかもしれない。
(文/鈴木未来)