便利もいいけど、手間もいいものだ。『僕らのミライへ逆回転』
- 『僕らのミライへ逆回転 プレミアム・エディション [DVD]』
- ジャック・ブラック,モス・デフ,ダニー・グローヴァー,ミア・ファロー,メロディー・ディアス,ミシェル・ゴンドリー
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心がのんびりしていないときは、時間短縮を叶えてくれる便利なものに手を出しがち。たとえばカレーなんてスパイスから作るよりもレトルトをチンしたほうが断然早い。考えてみれば生活を便利にしてくれるものはわんさかある。おかげで隙間時間ができて最高なのだが、ミシェル・ゴンドリー監督の『僕らのミライへ逆回転』(2008年)を観て、手間について考えを改めてみた。
ときは、巻き戻し不要のDVDがVHSに置き換わろうとしていた頃。でもフレッチャー(ダニー・グローヴァー)が営むレンタルビデオ店「Be Kind Rewind」はVHSのみのお取り扱い。そのうえ再開発のため、追い出される寸前...。
ある日、フレッチャーは「しばらく店を出るから」とバイトのマイク(ヤシーン・ベイ)に店番を頼むと、ひょんなことから感電したマイクの友達、ジェリー(ジャック・ブラック)が磁気のせいで全てのビデオの中身を消してしまう(泣)。でも常連のファレヴェッチ(ミア・ファロー)は『ゴーストバスターズ』を借りたいというし、どうしよう?と数分唸ったあと、二人は体にアルミホイルを巻きつけて、『ゴーストバスターズ』の"スウェーデン版リメイク"を撮影することに。一本できたら2本、3本とノリに乗って撮影しているうちに、「これもリメイクして〜!」と頼み入るファンが店で大行列。気がつけば近所の老若男女までもが制作に加わり名作がリメイクされていく中、フレッチャーは帰還。ここから先はご自身の目でお確かめあれ。
といいながら軽くネタバレをすると、リメイクされたビデオは後に破壊されてしまう。便利なものが壊れたりして使えなくなると「はぁ、また新しいのを買わないと」と面倒に思えたりもするけれど、手間暇かけてみんなで作ったものがなくなると、悲しいのはもとより、「でも一緒につくれて楽しかった」とほっこりもする。もちろん手間を面倒だと感じてしまえばそれまでだけれど、マイクとジェリーのように手間をウンと楽しめれば、結果はともあれゴールにたどり着いたときの喜びは格別かもしれない。
(文/鈴木未来)