もやもやレビュー

人生とアートの価値とは『鑑定士と顔のない依頼人』

鑑定士と顔のない依頼人(字幕版)
『鑑定士と顔のない依頼人(字幕版)』
ジェフリー・ラッシュ,ジム・スタージェス,シルヴィア・ホークス,ジュゼッペ・トルナトーレ,ジュゼッペ・トルナトーレ
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フランス家庭の台所で、中世イタリアで活躍したゴシック画家チマブーエの「軽蔑されるキリスト」が見つかったと云う。持ち主は価値のない宗教画だと思い、ガスコンロの上に飾っていたとか。どういう経緯かはわからぬが、その絵をオークション関係者が見つけ、鑑定の結果、なんと2400万ユーロ(約29億円)で落札された。

この手の話は一年に一度は聞く。ピカソが見つかったとか、ダヴィンチが見つかっただとか。その度に信じられない価格で競り落とされているので、絵画の価値って一体なんなんだ。なぜ高い絵は高いのか、と思うかもしれない。一般的には、美術品の価格=「需要と供給のバランス」「美的な価値」「希少性」の三点で成り立っていると言われている。それをジャッジメントするのが、オークション鑑定士の仕事なのだ。

『鑑定士と顔のない依頼人』はアートをテーマにした恋愛&ミステリー映画。一流オークション鑑定士であるヴァージル・オールドマンは、人間嫌いで潔癖性、女性が苦手。自宅には恋人代わりの「美女の肖像画」をコレクションしている始末...。そんなヴァージルのもとに、古い屋敷にある骨董品をまるっと鑑定してほしいという依頼が。でも、依頼主は電話でのやり取りばかりで姿を現さない。しびれを切らして、手続きが進められないと問い詰めると、彼女は広場恐怖症だという。人と会うのを恐れて閉じこもるクレアと、女性との関わりを避け続けてきたヴァージルは、果たしてどうなるのだろう。ラストには意表をついた展開もあり、
伏線を回収しながら二度、三度楽しめる、そんな作品に仕上がっている。

(文/峰典子)

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