もやもやレビュー

災難続きのボクの1日『コーヒーをめぐる冒険』

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不運な出来事が重なってしまうことは、誰しも年に数回はあるだろう。先日、友人がパソコンとiPhoneをほぼ同時に壊してしまったのには同情しか覚えなかったが、それにも何がしかの因果関係があるかもしれない。同じ時期に買って、どちらも寿命だったのかもしれないし。でもやっぱり、それも含めて運なのだ。

墜茵落溷(ついいんらくこん)という言葉がある。風に吹かれて舞った花びらが、一枚は布団の上に落ち、もう一枚は運悪くトイレに落ちるという意味で、人には運不運というものがあって、決してそれは因果応報によるものではない、ということが言いたいらしい。

ベルリンの街を舞台に、不運な青年の一日をモノクロで描き出すのが「コーヒーをめぐる冒険」である。大学を中退し親の金でぶらぶらと暮らしているニートのニコは、朝っぱらから彼女と別れ、カフェでコーヒーを頼むも所持金が足りず、お金を下ろそうとしたらカードがATMに吸い込まれてしまう。コーヒーを飲もうとすると必ず何かが起こり、1日中コーヒーにたどり着けない主人公の困り顔が延々と続く。退屈と言ってしまえばそれきりなのだが、それがニート暮らしの現実のようにも感じる。ニコの様子を見ていると、どうやら自ら不運を引き寄せてしまっているようなのだ。コーヒーを飲めたその瞬間が、ニコの転機になるのではないか。そう思いながら彼の不運の成り行きを見届けた。

この世の中、不運をガハハと笑い飛ばせる人ばかりではないだろう。何かのきっかけで吹っ切れることもあるし、時間が解決することだってある。どうしたら、世界はこっちに笑いかけてくれるのか。考察のしがいのある、滋味深い作品である。

(文/峰典子)

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