話題の映画を見る前にみたい名作『ローズマリーの赤ちゃん』
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最近、「死ぬまでに見たい映画1001」という本に選ばれている映画を鑑賞し、映画史やその映画の製作過程や当時のエピソードなどを調べるとより映画が楽しめるということに気がついた。
なんとも、マニアックな領域かもしれない。今回はこの1001本の中から『ローズマリーの赤ちゃん』を紹介したい。
この作品、ホラー映画という分類に入るのだが他のホラー映画とはひと味もふた味も違う。『リング』のように貞子みたいなお化けが現われるわけではない。ホラー映画によくある奇妙な物音がするわけでもない。見ているうちに連想させる恐怖というものを作り上げている。つまり、直接的に怖いシーンが出てくるわけではないのだ。それなのに、じわじわと恐怖は近づいてくるれっきとした「ホラー映画」に仕上がっている。
この作品の監督ロマン・ポランスキーは『戦場のピアニスト』でアカデミー賞監督賞を手にしている名監督の一人だ。ポーランド出身の監督がハリウッドで初めて撮ったのがこの『ローズマリーの赤ちゃん』である。原作は、当時妊婦が飲むと奇形の赤ちゃんが生まれることがあると言われたサリドマイド事件をヒントにアイラ・レヴィンによって書かれた小説だ。
当時1960年代という半世紀前には妊娠しても今のように超音波という技術もなくただただお腹の赤ちゃんが無事に産まれてくるのをまつしかなかった。心配なことがあっても現代のように気軽に見ることは出来ないのだ。妊娠中の妊婦の精神状態は不安定になることもある。そんな主人公ローズマリーは住人達の不審な言動から自分のお腹の中にいるのは悪魔の子供ではないかと日に日に不安をつのらせてゆく。
このローズマリーが住んでいるとされたダコタ・アパートメントは実在する高級集合住宅であり、ジョン・レノンと小野洋子もここに住んでいてこのマンションの前でジョン・レノンは銃撃にあったという豆知識も知っていると楽しい。
この映画が呪いの映画などと呼ばれるのはこの作品が出来た後に実際に起こった悲惨な事件があるからだ。監督であるロマン・ポランスキーは若くて美しい女優シャロン・テートと結婚する。だが、シャロン・テートが妊娠中、突然カルト集団に襲われなくなってしまうという事件が起こる。これがチャールズ・マンソン事件というのだが、この事件がタランティーノ監督の手によって映画化され現在公開中だ。せっかくならこの『ローズマリーの赤ちゃん』を鑑賞してからみにいくというのはいかがだろうか?
よりいっそう楽しめるかもしれない。
(文/杉本結)