もやもやレビュー

シラフの人間を強制バッドトリップさせる『センセイ君主』

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 漫画として読む分には面白いとさえ感じるのに、どうして実写化すると寒々しくなるのか。毎度毎度即死級の地雷を踏み抜く度に首をかしげる。毎年のように量産されていることを鑑みるに需要はあるのだろう。そこに共通するのはイケメンによる、現実世界で口にした瞬間、耳にした人間を漏れなく凍り付かせる台詞の数々。
 竹内涼真に甘い台詞をささやかれたら、ノンケの男も陥落するだろうに。しかし、漫画の吹き出しでは魅力的に見えても声に出せば痛々しい。芸人のスベリ芸のような着地点もなく物語は進むので、イケメンがキザな台詞を吐く度にメンタルが削られていく。
 もしかしたら凡夫の僻みである可能性も考えられるため、知人のギャル(19、キャバクラ勤務)と一緒に視聴していたところ、竹内涼真がキメ台詞を吐く度に隣で笑い転げていた。ギャルのキャバ嬢を一般化して考えるつもりはないが、イケメンが少女漫画的な台詞を吐けば誰が相手でも効くというものではないらしい。

 このまま延々と問題点を指摘していきたいのだが、おそらく永遠に未見の方が精神衛生上よろしいと思われるので簡単に説明する。佐丸あゆ(浜辺美波)は高校2年生で告白7連敗。あゆは牛丼をやけ食いして財布を忘れたことに気付き、弘光由紀(竹内涼真)が颯爽と支払い立ち去る。舞い上がるあゆは運命の出会いと有頂天になっていると、翌日新任の数学教師として由紀が赴任。そこからあゆが男子生徒に告白されて付き合ってみたり合唱祭で活躍したり、由紀の過去が判明したりとテンプレを詰め込んでいく。由紀が実は将来有望な数学者だったとか、突っ込みどころは過積載。なんだかんだで幸せなキスをして終了。ご都合主義の極みである。漫画でやれ。他の媒体に持ち込むなこんなもん。

 他には、ジュディ・アンド・マリーの『OVERDRIVE』が作中で利用されていたことが気になる。40近い人間には懐かしさがあるものの、隣の19歳には特に響いた様子はない。ターゲット層である中高生にしても、自分が生まれる前の音楽を聴かされたらそんなものだろう。原作は未見だが、おそらく忠実に再現しようとしたのだろう。しかし、漫画という表現を3次元で再現するなら相応の書き換えは必要だろう。それをしないというのは怠慢でしかないように思う。別に実写じゃなくてアニメでいいし。

 それにしても、異なる原作を散々使っておきながら物語の構図から登場人物のリアクションまで何を観てもほぼ同一って、どういうことなのだろう。若い世代向けにこんなゴミを量産して映画嫌いを増やしたところで映画業界に益することは一つもないと思うのだが。

(文/畑中雄也)

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