もやもやレビュー

たった二人のふたつの世界『ROOM』

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凄まじい評価だった。アカデミー賞で主演女優賞受賞を獲得しただけでなく、世界中の映画賞で注目を集め、216部門ノミネート/98受賞を叩き出した。観たい気持ちが強かったが、どうしても足が遠のいてしまう。7年間に及び小さな部屋で監禁された親子が脱出し、社会復帰するまでを描く重い一本である。見るに堪えないし、落ち込むに決まってる。映画館で見ることは叶わなかった。きっかけとなったのは、5歳のジャックを演じたジェイコブ・トレンブレイ君が主演の『ワンダー 君は太陽』である。なんて繊細で自然な演技なんだろう。おいおい、天才かよと思う。俄然『ROOM』も気になってきてしまう。

前半は部屋の中だけで話が進行していく。母ジョイを演じるブリー・ラーソンの血色の悪さにリアリティを感じていたら、役作りのために1か月ものあいだ外出せずに過ごし、撮影時はノーメイクだったそうだ。最初は休暇のつもりでと軽く思っていたらしいが、次第に落ち込むようになり、1日の大半を泣いて過ごすようになったらしい。そんな監禁という絶望のなかで、唯一の生きる理由がジャックという存在なのである。

脱出できたね、お涙頂戴で終わらない展開に好感が持てる。脱出後の生活が描かれる後半。キーとなるのは、ジャックは監禁先で生まれ育ったため、外の世界があることも知らず「出たい」という想いが皆無なこと。母子で脱出を企むも、その辛さに「ママなんて大嫌い」と口走ってしまう。そんなジャックが木や雨、母親以外の人間の温かさに触れていく。まるで氷が溶けていくような繊細な感情表現が素晴らしかった。希望を味わえる。

(文/峰典子)

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