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恋愛に必死になるのはやめようと思った『ロブスター』

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近年の恋愛のしかたには、ちょっぴり違和感を感じる。アプリを開いて、ピンとくる人が画面に現れるまで、顔写真をひたすらめくり続ける。言ってしまえば、選択肢が無限にあるお見合いである。このようなパートナー探しが、いつの間にか一般化されてしまった。でも、なぜそんなに必死になってパートナーを探さなきゃいけないのだろうか。恋愛が一切ない人生はたしかに寂しいかもしれないけれど、独り身を悲しいことと捉える必要なんてないし、不満だらけな恋愛をしているほうがよっぽど哀しい気がする。

ところがヨルゴス・ラティモス監督の『ロブスター』(2015)は逆をいう。何せこの世界では、パートナーがいなければ生きる資格がないとみなされてしまうのである。コリン・ファレル演じる主人公のデヴィッドは、離婚後さっさとパートナー探しの施設に入れられ、45日以内にパートナーを見つけられなければ、自ら希望した「ロブスター」にされてしまう運命を課せられる。パートナーを見つけるか、死ぬか。ここまでくると愛のためというよりも、命のために無理くり恋愛をする始末である。

デヴィッドはというと、見つかったパートナーとうまくいかず、このシステムを打破しようと森でひっそり暮らすシングル派の一員になることに。この森ではルールが真逆で、恋愛が一切禁止。が、デヴィッドはここにきて恋に落ちてしまう。その結末は自分の目で確かめて欲しいが、決まりごとを踏みにじってまでお互いを思いやる相手ができる中でも、壁にぶつかると直感的に自分を優先してしまう姿が垣間見えたような気がした。

だけれど、恋愛なしでは命が保証されなければ、恋愛は自分を守るための手段となってしまう。となれば、恋愛の捉え方も変わって仕方ないのかもしれない。そもそも恋愛ごときで悩めるだけでも幸せなのだけれど、恋愛が幸せになるひとつの方法であるうちは、必死さに駆られてではなく、楽しんで挑みたいものである。

(文/鈴木未来)

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