もやもやレビュー

ほんとうの孤独は目に映る『グッド・タイム』

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ヒット作が思い出深い俳優。たとえばハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフ。ホーム・アローンのマコレー・カルキン。ロード・オブ・ザ・リングのイライジャ・ウッド。計5本に渡る恋愛ファンタジー『トワイライト』に出演したロバート・パティンソンもそのひとりのような気がする。最終作品『トワイライト・サーガ/ブレイキングドーンPart2』が公開された2012年から早くも6年が経とうとしているけれど、やっぱりあの色白な吸血鬼の印象がパッと思い浮かぶ。

ところが、ロバートのかつての吸血鬼イメージをすっかり忘れる作品を見つけてしまった。それはカンヌ国際映画祭での上演後、拍手が6分間やまなかったというサフディ兄弟監督の『グッド・タイム』(2017)。

主人公は、兄のコニー(ロバート・パティンソン)と知的障害を持つ弟のニック(ベン・サフディ)。息苦しい社会から抜け出して、知的障害の弟が変に特別扱いをされない普通の生活を求めて「牧場移住計画」を企てたコニー。そこで資金を集めるために彼がニックと敢行したのは、銀行強盗。騒動も起こさず計画通りに進んだと思いきや、結局ニックだけが捕まり、留置場に入れられてしまう。その後、コニーはニックを保釈しようと動き出すが、夜が深まるに連れて、ふたりの運命はどんどんこじれていく。

弟のニックを救おうと、夜の街を必死に駆け巡るコニー。エゴは大きいし、平気で人を欺く。それでもなんだか脆く映るのは、愛情不足で育てられた背景があるからのような気がした。というのも、本編では祖母以外の家族がひとりとして登場しない。悪事に手を染めながらもコニーが時折浮かべる寂しげな目には胸を締め付けられるような思いをした。

あの吸血鬼のイメージをすっかり忘れてしまったのは、弟を救ってどうにか罪から逃れようとする必死さに混じった、ロバートの寂しげな目がキーポイントだったと思う。ほんとうの孤独とは人間の目に映るのかもしれない。なんて、勝手にものすごく切なくなったのである。

(文/鈴木未来)

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