アイドルの神性が消えた時代『セーラー服と機関銃‐卒業‐』
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アイドル映画と分類されるものを何作か観ると、そのアイドルのファンでない限り楽しみ方が分からない。映画というフォーマットにする必要を感じないのだ。
特に脚本は物語よりもアイドルを見せることに重点を置いているため、部外者が観るには難易度が高すぎる。メディア露出が多い人気アイドルを映画で見せる必要性は今日あるのだろうか。
小所帯の目高組を受け継いだ星泉(橋本環奈)は組を解散させ、組員とともに商店街で「めだかカフェ」を営む普通の女子高生に戻った。対立していた浜口組も時流に逆らえず合法的な商売で生計を立てている。ところが、地元の平和を脅かす第三勢力が迫りつつあった。
本作は1981年、薬師丸ひろ子が主演した作品の続編となる角川映画40周年記念作品だ。そんな記念碑みたいなものに今日のアイドルを起用するのだからすごい度胸だと皮肉抜きで驚く。橋本環奈が「1000年に1度のアイドル」と呼ばれていた時期だとしても、薬師丸ひろ子がアイドルだった時代とは構造が変わり過ぎている。当時のようにアイドルが崇高な存在だと盲信する人間を探す方が難しい。
橋本環奈が今でも映画やドラマで出演しているように、演技自体はアイドル映画特有の酷いものにはなっていない。非ファンの観賞に耐えられる水準だ。
ただ、アイドル映画として彼女を大画面で堪能できるようにしている部分と、物語を作りこもうとした部分がゴチャゴチャしていて、どっちつかずになっている印象を受ける。橋本環奈ファンにも映画ファンにも優しくない内容。興行収入が散々だったのも頷ける。そもそも、暴排条例吹き荒れる現代で正義のヤクザという設定も......。
映画として問題があった点はいくつも挙げられるが、おそらく完成度が非常に高かったとしても結果は同様だったと思われる。アイドルが手の届かない存在ではなく握手する存在へと変化した時代にアイドル映画というコンセプトは厳しいだろう。せめてアイドル冬の時代だったら受ける印象も異なったのだろうが......。
(文/畑中雄也)