忘れられない友達を探しに『猫が行方不明』
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再会したい人とのエピソードを投稿する海外の掲示板サイトをご存知だろうか。例えばこんなかんじ。「探している野菜がないか聞いた。あなたはないと言って、その代わりにケールを持ってきてくれた。ケールをとったら積み上げられた野菜が崩れたので、慌てて逃げた。残ったのは後悔とオーガニックのケール」「道を歩いていたら、デリ店の窓ごしに長袖シャツの君が見えた」「 同じチェック柄の商品を手に取っていた。僕は枕カバーとシーツ、君は布団カバー」「電車で向かいに座って、ヘッドホンがイケてるね、と親指を立ててくれたね」といった具合。運命の相手だったのかもしれない。けれど、いったいその場でどうしたら良かったのだろう。そんなやるせない感情が詰まっていて、読んでいると胸が締め付けられる。
運命というと、ペットとの出会いもそう言えるかもしれない。いなくなった愛猫を探す様を描いた「猫が行方不明」を紹介しよう。舞台はパリの下町、主人公はメイクアップ・アーティストのクロエ(ちょっと冴えない美人)。バカンスで海に行っているあいだ、飼い猫の"グリグリ"を近所の猫好きおばあちゃんに預けるも、帰ってくると猫が行方不明になっていた。ルームメイトや近所の老婦人ネットワーク、街でよくすれ違い密かに好意を抱いている青年、隣人の画家...。迷子の猫さがしの途中で出会う人間模様がとても魅力的。
もったいぶった演出はなく、程よいテンポでシンプルに進んでいくストーリー。フランス映画ってどうも眠くなるという人にもオススメできる一本。公開から20年が経っているけれど、キメ過ぎない肩の力が抜けたファッションや音楽も気が利いているし、冴えない毎日から抜け出せないクロエの日常がなんとも現代の女子模様と重なる。今を生きるわたしたち必見。
(文/峰典子)