もやもやレビュー

子供の目は鋭かった。『パリ、テキサス』

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4年とは、あなたにとって短いだろうか?長いだろうか?考えてみれば、大学だって4年間。その間、ある人は一つの分野を極めて、将来の方向性をそれとなく決め、ある人は遊び呆けて卒業式の朝に「もう卒業?」なんていいながら目を覚ます。

この映画の主人公であるトラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)は、どちらかといえば前者である。でも、彼は勉強をして方向性を定めたわけじゃない。アメリカのミッドウェストを4年間彷徨いながら、記憶の欠片をぽろぽろ落とし、半ば記憶喪失という状態から、周りの助けありきで自分なりの方向性を定めていく、というちょっぴりレアケース。

というわけで、4年間行方をくらましていたトラヴィスの方向性が定まるきっかけとなるのが、弟ウォルト(ディーン・ストックウェル)との再会。そして、記憶とともに喋り方まで忘れてしまったトラヴィスを車に乗せ、家路を辿るところから『パリ、テキサス』は始まる。
そこで沈黙を埋めるように話すウォルトの口から、トラヴィスにはもう時期8歳になるハンター(ハンター・カーソン)という息子がいるってこと、妻のジェーン(ナスターシャ・キンスキー)もトラヴィスと同じくらいに姿を消し、ウォルト夫婦がひとり残されたハンターの面倒を見てきたというふたつの事実が発覚。
そしてウォルトの話を聞いて正気をとり戻してきたのか、少しずつ言葉を発し始めるトラヴィス...。その後、息子のハンターとなんとも不器用な再会を果たし、4年間の溝を少しずつ埋めていくふたりは、後にジェーンを探すロードトリップに出かけることとなる。

ネタばらしをしない程度に説明したいが、この作品で注目して欲しいのは、ハンターが随所でポロリする年齢にそぐわない大人な発言。それも、まだトラヴィス、ジェーン、ハンターの親子三人が揃っていた頃に撮影されたホームビデオ鑑賞後、「パパはホームビデオに映るママが好きなんだ。今は存在しない彼女を思ってるんだ」なんてサラッと(それも、愛らしく)言っちゃうくらい。

大人は物事をどうも複雑にしたがる傾向にあるから、たまには何事にもストレートな子供の言動から倣ったほうがいいのかもしれない。「まだ子供だからね」なんてお子様扱いをしている場合じゃないのかもしれない。ちっちゃい子ほど感情に鋭いんだから。侮るべからず。

(文/鈴木未来)

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