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冷静なのにアツかった!『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン [DVD]
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発表数が少なかったり、執筆に時間がかかる芸術家や作家などを「寡作」と表現することがある。例えばレオナルド・ダ・ヴィンチ。あらゆる分野に精通した彼だったが、画家としては発表数が少ない寡作家。デッサンこそ900も残っているというが、途中で書くのをやめて依頼主を放ったらかしにしたり、最後まで書き上げることがなかなか出来なかった。飽きっぽく途中で面倒になってしまうのか、それとも天才ゆえに納得が出来ないのか、いずれにしても、レオナルド本人としてはそれでも構わない、と思っていた節がある。

一言に寡作と言っても、それぞれに理由はあるのだろう。アメリカで最も有名な詩人のひとり、エミリ・ディキンスンの場合は、生前に発表した詩が10篇。そして死後にクローゼットから発見されたものが1800篇。これを寡作と呼んでいいものかどうか難しいところである。

『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』でエミリを演じたのは、セックス・アンド・ザ・シティのミランダ役で有名なシンシア・ニクソン。エミリの詩のファンで、出演を熱望したという。結婚もせず、家から出ることもほとんどなく、家族と暮らし、言葉を綴り、そして皆から認められる前に息を引き取っていった。実際に暮らしていたという生家で撮影したといい、そこに漂う重くずっしりとした空気感がスクリーンから伝わってくる。まさか死後、こんなにも広く知られる詩人になったなんて、天国のエミリはどう思っているだろうか。そんなこと知らないわよ、なんてそっぽを向いて、お茶を飲み、クッキーの一つでもつまんでいそうである。そして、その顔には穏やかな笑みが浮かんでいるのだと思う。

(文/峰典子)

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