竹内力のビフォー・アフターを楽しむ『JINGI 仁義』
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20代の若者に「竹内力は当初爽やかなルックスをした俳優だったんだよ」と話したら酷く驚いた後に爆笑された。20年近くVシネマを中心に視聴しているせいで言った当人も「竹内力=いかついヤクザ顔」と脳に刷り込まれてしまっている。そんな折に本作を見つけ、竹内力の優男っぷりに驚いた。誰、このイケメン。
原作は立原あゆみの同名漫画。チンピラの神林仁(伊原剛志)が間違って銃撃した元エリート銀行員の八崎義郎(竹内力)との出会いからバブル期に暴力団社会で2人が駆け上がっていく様子を描いている。
描かれている内容は原作の序盤部分だけで、その後のストーリーはVシネマに引き継がれている。映画としてどうこう論じるには立原あゆみファンでVシネマ愛好家として正確な評価を下すことは難しい。
ただ、Vシネマ版ではドヤクザ全開の神林役を演じているのに、上映版の本作では八崎役を演じている。パッケージに写る竹内力は線が細く、もう1人の主役である伊原剛志のほうがヤクザ然としている。トレードマークのオールバックも頼りなさげ。いかつい雰囲気を醸し出していない竹内力に強烈な違和感を覚える。いや、原作のキャラクターに沿ってはいるのだが......。
どうにも固定観念にこり過ぎて映画をまともに視聴できない。これまで観てきたVシネマの竹内力像が脳内で邪魔をして画面に映る竹内力を上手く認識できない。そのため映画自体に集中できず内容以前に違和感だけが膨れ上がる。公開は1991年なのでまだ竹内力がVシネマに君臨する以前の作品なので2017年の印象で視聴しては不公平なのは承知しているが28年の歳月を振り切ることはほぼ不可能。そのため残された楽しみ方は竹内力のビフォー・アフターを堪能するという邪道な方向に向いてしまう。
1つの役の色がつくと抜け出すことは難しいと映像関係者の誰かが言っていたが、それがどういう意味なのかよく理解させてくれる作品だ。もっとも、制作した当初はそんな意図は皆目なかっただろうけれど。
(文/畑中雄也)