もやもやレビュー

どこを切り取っても陰惨な物語『バービー』

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 韓国映画全般を論じられるほど視聴はしていないが、これまで観た感想を一言で表すと「ひたすら濃い」に尽きる。それが実話ベースの悲惨な内容になると濃い上に絶望しかなくて数日はぐったりする。

 本作は過去に横行していた韓国の偽装養子縁組と臓器売買を基にした作品だ。主な登場人物はバービー人形に憧れる病弱な妹スンジャと知的障害を抱える父親、金のために姪を臓器売買の養子縁組をする叔父、そして主人公のスニョン。登場人物を紹介した時点で既に重い。臓器売買に関わるだけあって皆貧困にあえいでいる。
 2人の娘を持つ米国人が臓器移植の対象を探しに韓国を訪れ、スニョンと米国人の娘バービーは交流を深めていく。その様子を見た米国人の父親は当初スニョンを臓器移植の対象にする予定だったがスンジャを代わりに連れて行くことを決意。何も知らないスンジャは米国で豊かになれると喜び自分の運命を知らないまま米国へと旅立っていく。
 作中の平穏で美しい風景と物語の陰惨さの対比は、視聴を進めるほどに胸にのしかかる。絶望感を掻き立てる工夫がそこかしこに施され、視聴を終えた頃には気分が悪くなった。大人が下手打って臓器を抜かれるのであれば違法ではあっても自業自得だが、子供には何の罪もない。それが一層物語を悲惨なものにしている。

 日本で金のために子供が臓器を抜かれるなんて話は幸福なことに聞いたことがない。これと同じ内容を邦画で制作しても「リアリティが欠片もない」と一蹴するだろう、現在のところは。そんなところに救いを求めるほど本作は一貫して残酷な物語を徹底させている。おかげでしばらくは軽い物語しか観たくない。

(文/畑中雄也)

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