空腹時の犬には要注意。『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』

　ロバート・ダウニー・Jr主演の『キスキス,バンバン -L.A.的殺人事件』（2005）。サスペンスとコメディを掛け合わせた本作は、ヤク中だったロバート・ダウニー・Jrが本格的に復帰した作品として知られています。今や、"戦う実業家"、"キレッキレの名探偵"という役柄のイメージが強いロバートが、本作では少し頭が弱いキャラを演じているので、彼のダメっぷりを見てみたいロバートファンは必見です。

　ニューヨークのコソ泥・ハリー（ロバート・ダウニー・Jr.）は、ある日、おもちゃ屋さんを襲撃するも見事に失敗。警察に追われるハリーが逃げ込んだのはなんと探偵映画のオーディション会場でした。警察に追われ、相方が打たれてしまったりと、パニック状態のハリーを目の当たりにした審査員は、彼が迫真の演技をしていると勘違い。見事オーディションに合格したハリーは役作りのため、本物の探偵ペリー（ヴァル・キルマー）に弟子入りすることになります。ペリーと一緒に行動することになったハリーは、憧れの幼なじみハーモニー（ミシェル・モナハン）と偶然にも再会するのですが、その後、三人はとんでもない事件に巻き込まれてしまいます。

　注目は、ハリーとハーモニーがドア越しに喧嘩するシーン。激高したハーモニーは扉を思いっ切り閉めるのですが、なんとハリーの指が挟まり、ちぎれてしまうのです。「今、もしかして指落ちちゃった？」と気まずそうに反応するハーモニーと、自分の落ちてしまった指が見られないから拾って欲しいと冷静にお願いするハリー。「え、本当に指ちぎれたの？」と思わずツッコんでしまうほど、そんなシーンさえも軽快に過ぎ去っていくのです。肝が据わりまくっている人ばかりが出てきて、ブラックジョークも満載。ツッコミが追いつきません。

　さらに、ハリーがちぎれた指を氷で冷やしているところに、犬が登場。なんと指を加えてその場を立ち去ります。必死で指を取り戻そうとするハリーをあざ笑うかのように、ハリーの目の前で指を食べちゃうワンちゃん。ブラックすぎる。でも空腹時の犬に「待て！」は通用しない......ってことは大概みんな知ってますよね。本当に本作のロバートは頭が弱いです。本作で学べたのは、「空腹時の犬に要注意」ということ（くらい）です。他は、もうシンプルに笑うだけ。海外らしいブラックジョークに浸るのにオススメな作品です。

（文／トキエス）