もやもやレビュー

『ソロモンの偽証』を観て、思春期にダークサイドに落ちることを肯定された気分になった。

ソロモンの偽証 前篇・事件 [DVD]
『ソロモンの偽証 前篇・事件 [DVD]』
藤野涼子,板垣瑞生,石井杏奈,清水尋也,前田航基,望月歩,佐々木蔵之介,夏川結衣,永作博美,黒木華,田畑智子,津川雅彦,余貴美子,松重豊,小日向文世,尾野真千子,成島出
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 思春期のころ「生きるって何だ?」「宇宙ってなんだ?」とすごい規模で"生きること"について考えていた時期がありました。大人になった今、「あ〜あのときは、すごくダークサイドに陥ってたな」なんて笑い話にして振り返ることもできますが、そんな思春期の中学生たちが集結した映画『ソロモンの偽証』が、もう闇すぎて、自分の中学時代の思考は大してクレイジーじゃなかったんだなと再確認。ダークな思春期を送っていた方は必見です。

 人気作家・宮部みゆきのベストセラーを実写化した本作は『前篇・事件』と『後篇・裁判』の2部作。『孤高のメス』の成島出監督がメガホンをとり、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美など実力派俳優がこぞって出演しています。そんな豪華メンバーたちと、大規模オーディションで選出された生徒33人が見事に"思春期の闇"を描き出しているのです。

 舞台はクリスマスの朝の中学校の校庭。友人の野田健一と一緒に登校してきた藤野涼子は、雪に埋もれたクラスメイトの柏木拓也の遺体を発見します。警察や学校は自殺と判断しますが、数日後に何者からか「あれは自殺じゃなく事件だ」という内容の"告白状"が学校の関係者何人かに届きます。それが次第にマスコミにも知れ渡り、報道がヒートアップ!しかし、自分たちの都合で事件を隠したり忘れようとする大人たちの対応に納得ができなかった藤野涼子は、学校内裁判を開廷することを決意! 真実を暴くために同じ学年の仲間達と立ち上がります。

 注目してほしいのは、登場人物がそれぞれ違うパターンの闇を抱えていること。主人公の藤野は、友人がいじめられているのを目撃したにも関わらず、その場から逃げようとし、柏木から「口先だけの偽善者だ」と言われたことを"闇"として心に抱えています。そのいじめっ子である大出俊次は家庭内暴力に苦しみ、いじめられっ子の三宅樹理は自分のニキビがコンプレックスで、人にも冷たくあたってしまう。それぞれの"闇"は、どれもセンセーショナルに描かれていますが、実際に思春期時代に経験したことがある人もいるようなどこにでもある"闇"なのです。

 今、まさに思春期まっただ中な人、「思春期はやんちゃしてたな〜」「一回自殺考えたことあったな」なんて人が本作を観れば、少々心は傷みますが、自分の闇を肯定された気分になります。闇に陥ったことで引き起こす難解な事件に共感しながら、ミステリーを楽しむことができると思います。

(文/トキエス)

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