もやもやレビュー

「愛」が足りてないと感じたら、依存症に要注意。『SHAME シェイム』

Shame/シェイム [リージョンA][Import]
『Shame/シェイム [リージョンA][Import]』
CBS Films
商品を購入する
>> Amazon.co.jp
>> HMV&BOOKS

 アルコール依存症、ギャンブル依存症、SNS依存症、整形依存症など、さまざまな依存症が溢れている世の中。結局、依存症とは自分の心の隙間を埋める手段なのかもしれません。なかでも特に寂しさや孤独など対人間への感情から生まれた依存症であるセックス依存症と恋愛依存症にフォーカスを当てた映画『SHAME シェイム』("恥"の意味)。現代人の心にぐさぐさ突き刺さるものが詰め込まれています。

 ニューヨークでバリバリ働くビジネスマンのブランドンは、コールガールやセックスフレンドを家に呼び、一夜限りの関係をもったり、上司に指摘されるとトイレに駆け込んで自慰行為をしたりと、ストレスをすべてを性行為で発散させるセックス依存症。なにかあればすぐにセックス。そんな生活から抜け出せずにいたブランドンのもとに、妹のシシーが突然転がり込んできます。実は彼女もある依存に苦しめられていました。それは"恋愛依存症"。転がり込んだ直後、ブランドンの上司(既婚者)と関係を持ってしまうなど、彼女が放つのは「悲しい」「かまって欲しい」という、いわば"悲劇のヒロイン"オーラ。女性の視点からみて、シシーのキャラクターはとっても一般的で、正直、誰しも会ったことがあるような"かまってちゃん"なのです。そんな違うタイプの依存症である2人が一緒に生活することで、余計に孤独を深めていってしまいます。

 注目してほしいのは、ブランドンが同僚の女性に好意をもち、その人といざベッドイン!という時に、恋愛感情が邪魔してしまい、セックスできなくなってしまうシーン。"依存症の恐怖"をまざまざと見せつけられます。同僚女性とうまく恋愛できれば、心も満たされ、依存症も徐々に良くなっていくのでは?という前向き感から、一気に突き落とされるのです。セックス依存症のブランドンは一般的な恋愛ができなくなってしまっていたのです。そんな自分に悩んだブランドンはすぐさまコールガールを呼び、激しいセックスを繰り広げます。ブランドンの依存を治すために本当に必要な"一般的な恋愛"が依存症により遠ざかってしまう。悪循環すぎます。一方、妹のシシーも、やっぱり落ちるところまで落ちていきます。

 どうしてこの兄妹は依存症になってしまったのか。その原因にも、心傷むこと間違いなしです。感情移入しやすい人は、心をダークサイドに持っていかれる覚悟が必要かもしれません。また"愛情"がどれだけ人間に必要なのか、考えたいときにも本作はオススメです。

(文/トキエス)

« 前の記事「もやもやレビュー」記事一覧次の記事 »

BOOKSTAND

BOOK STANDプレミアム