『アルゴ』 清らかな嘘は世界を救う。
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- ベン・アフレック,ブライアン・クランストン,アラン・アーキン,ジョン・グッドマン,ベン・アフレック,ベン・アフレック,ジョージ・クルーニー,グラント・ヘスロヴ,クリス・テリオ,ベン・アフレック
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「柳暗花明(りゅうあんかめい)」という四字熟語がある。行き詰まったかと思った時、新しい展開がひらけることを意味する言葉だ。人間誰しも、一生に1回はとんでもない難局が訪れるのではないかと思う。どうしてもここから逃げたい。あの場所へ行きたい。透明人間になりたい。頼れる敏腕刑事やスナイパーなんて、facebookの友達リストにいない。というか、そもそも友達がいない...。そんな絶体絶命のタイミングで、新しい展開をひらくための最終手段があるとしたら、それは「別人のふりをする」ことではないだろうか。
人の名をかたるというと、まず思い描くのは犯罪の現場かもしれない。映画に登場するスパイや詐欺師たちはいとも簡単に「なりすまし」を図る。しかし一方で、自分や相手の身を守るための方便として、不純物のない嘘が用いられることもある。実例として、ベン・アフレックが監督主演をつとめた『アルゴ』を紹介したい。
1979年11月、イランのイスラム過激派グループがアメリカ大使館を占拠するという事件が起こった。大勢が人質に取られる中で、裏口から抜け出した6人の大使館職員。カナダ大使の自宅に隠れる6人を救出するために、人質奪還のプロであるCIAのトニー・メンデス(ベン・アフレック)が考えだした作戦は、架空のSF映画『アルゴ』を企画し、ロケハンのため渡航したスタッフに仕立てて、イランから出国させるというもの。
ストーリーに多少の"盛り"は見られるものの、この事件と救出作戦は実話だという。バレるのか、バレないのか。助かるのか、助からないのか...。現実社会で別人のふりをするのは、なかなか大変なことがよくわかる。しかし、清らかな嘘は誰かを、そして世界を救うのである。演技力を磨いておいて損はなさそうだ。
(文/峰典子)