"生きること"を日本の古き良き文化とあわせて学ぶことができる『あん』
- 『あん DVD スタンダード・エディション』
- 樹木希林,永瀬正敏,内田伽羅,市原悦子,水野美紀,太賀,兼松若人,浅田美代子,河瀨直美
- ポニーキャニオン
- >> Amazon.co.jp
- >> HMV&BOOKS
昨年の第40回トロント国際映画祭にて北米プレミア上映が行なわれた、河瀬直美監督の『あん』。樹木希林さんと孫の内田也哉子さんの初共演も話題になった本作は、日本文化の素敵さと、多忙な日常の中で忘れがちな「生きることとは何か」を教えてくれる作品です。
桜が満開の春。どら焼き屋「どら春」で働いていた雇われ店長の千太郎(永瀬正敏)のもとに、徳江(樹木希林)がアルバイトを申し出に来ます。70を過ぎた人に力仕事は無理だと断る千太郎に、徳江は自分で作った餡を千太郎に渡して帰ります。しかし、徳江の餡を食べた千太郎は、その美味しさにビックリ! 餡担当で徳江を採用することに。小豆をおもてなしするように、語りかけながら大切に仕込む特製の餡はみるみるうちに評判になり、店は大繁盛します。しかし、徳江が以前、ハンセン病にかかっていたことが噂になり、「どら春」のオーナーは千太郎に徳江を解雇するように詰め寄ります。そして次第に噂が広がり、客足がどんどん遠のいてしまった状況を把握した徳江は店から去ってしまいます。
注目は、徳江が餡を作るシーンです。割烹着を身に纏う徳江がひとつひとつの行程を丁寧にこなしていく様を見ていると、日本っていいなぁとしみじみ感じます。桜が満開の公園沿いにあるどら焼き屋で出来立てのどら焼きを食べる日本らしい風景は、イチ日本人としても憧れてしまうシチュエーション。
ストーリーが展開していくにつれ、千太郎の持つ悲しい過去と、ハンセン病にかかってしまった徳江の辛い過去が重なり合っていきます。無口なキャラの千太郎も思わず涙してしまうほどの徳江のひとつひとつの言葉は、観客の胸にも突き刺さる何かがあります。それは「生きる」ということをテーマにした言葉ばかり。生きる意味とは何か?と普段考えることがない人、毎日をたんたんと暮らしてしまっている人にぜひ観て欲しい作品です。
(文/トキエス)