『マイ・バック・ページ』を観て若者残酷物語だと思った
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新米でもベテランでもスクープを追い掛けるあまり、人生の喜びを一切合切ドブ川に捨てるような連中だ。雑誌であれ新聞であれ、テレビ、フリーランスの記者であれ地べたを這いずり回り、スクープを目指す。何故なら記者稼業は狩りに似て、他社を追い越したという優越感だけが連中の原動力だ。
仮に主人公・沢田(妻夫木聡)のように駆け出し記者だったりすると、ネタは取れない、取材も満足にこなせない。そんな時に1面トップ級の記事を書くチャンスに恵まれたらどうなるか。松山ケンイチ扮する革命家・梅山と接触したらどうなるか。「世間に一泡食わせたい」という2人の焦燥感が、沢田と梅山が最終的に自衛隊員殺害事件を起こすほどの猪突猛進さを示す要因であったと容易に想像できる。
終盤は梅山らグループの逮捕、沢田の「世界を一身で変えたい」という思いで書いた原稿はついに掲載まで辿りつけなかった。
彼らは敗北したのである。子どもが砂で作った大層な思いだけが浜辺で波に攫われて最終的には何も残らなかった。
昨今、安保法案で国会及び周辺が姦しい。国会に立つ若者たちもいずれか運動を離れることになるだろう。自身が何者なのか探し、途中で挫折して運動から外された、かつての左寄りの「若者」たちは何を思うのだろうか。
(文/畑中雄也)